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愛情ホルモン「オキシトシン」 〜頭痛治療薬としての可能性〜

こんにちは、ひふみです。
今回は愛情ホルモンとしてもよく知られるオキシトシンについてです。
最近の研究で頭痛との関連がよく知られるようになってきており、
オキシトシン点鼻薬が頭痛薬として海外で臨床試験がなされています。

近い将来、頭痛治療の強力な選択肢になるかもれません。
現段階での知識を簡単にまとめます。


愛情ホルモン「オキシトシン」とは?

オキシトシンは脳の視床下部で産生されるホルモンで、下垂体後葉から全身に放出されます。
脳内で広く作用し、愛着形成信頼関係の構築に関与したり、また恐怖感や不安感を和らげる抗うつ作用もあります。
授乳や妊娠、性的接触、食事で分泌が亢進することが知られています。
以上より一般に愛情ホルモンや幸せホルモンと呼ばれています。

オキシトシンの鎮痛作用

このように幸せに関与するオキシトシンですが、鎮痛作用もあるようです。
体内のオキシトシン分泌が低下すると、痛みへの感受性が亢進し、慢性疼痛に関連することがわかっています。

中枢神経でのオキシトシン

オキシトシンは扁桃体など脳内で作用して不安感を和らげたり、
また痛み刺激に対する中枢性の感作を緩和する作用もあるようで、
直接的・間接的に痛みを緩和します。
オキシトシンは先ほど述べたように視床下部で産生されます。
視床下部は片頭痛の予兆にかかわることが分かってきており、オキシトシンとの関連が注目されています。

CGRPとオキシトシン

近年、頭痛の原因として CGRPという痛み物質が話題になっています。
頭痛には主に三叉神経という感覚神経が関わっています。
頭痛時には三叉神経からCGRPが放出され、痛みや炎症を引き起こします。
このCGRPの作用を抑えるエムガルティやアジョビなどの注射薬は、
今や片頭痛予防薬の中心となっています。

実は、オキシトシンもまたCGRPの放出を抑制する作用があることがわかってきています。
オキシトシン受容体は、三叉神経や他の感覚神経に広く発現しており、
オキシトシンがそこにくっつくと、CGRPの放出を強力に抑制します。
CGRPと拮抗するホルモンが実は幸せホルモンのオキシトシンであったということはとても興味深いです。

オキシトシンと月経関連片頭痛

女性ホルモンであるエストロゲンには、オキシトシンの分泌促進効果があります。
月経時にはエストロゲンならびオキシトシンが低下します。
このようにオキシトシンは生理周期とも深い関連があり、その低下が月経関連片頭痛の要因の1つではないかと言われています。

頭痛に対するオキシトシン点鼻薬

オキシトシンの鎮痛作用・CGRP放出抑制に期待し、
オキシトシン点鼻薬が開発されてきています。
これは鼻腔内にオキシトシンを注入し、頭痛抑制効果を期待するもので海外で臨床試験が行われている最中です。
皮下や静脈にオキシトシンを投与するとすぐに代謝されてしまいます。
全身への曝露を抑えながらより神経への作用を期待して鼻腔内投与が選ばれたようです。

オキシトシン点鼻薬の研究結果

オキシトシン点鼻薬について、最近行われた比較試験をまとめます。
まず慢性頭痛患者を対象とし、片頭痛発作時にオキシトシンの鼻腔内投与を実施したところ4時間後の頭痛が有意に軽減しました。

また慢性頭痛や高頻度片頭痛患者に対し、28日間連続で鼻腔内投与を行ったところ、平均で8.2日の頭痛日数の減少があるなど予防効果も示されました。

一方で低頻度の軽症片頭痛患者に対し頭痛発作時に点鼻薬を使用した試験では、残念ながら投与後2時間における頭痛強度の有意な軽減は示されませんでした。
羞明・聴覚過敏・吐き気などの周辺症状には効果があったようです。

これらの試験で重篤な副作用や中毒症状は認めませんでした。

オキシトシンは慢性頭痛患者でより効果が期待できる!

以上の研究結果から、オキシトシンの点鼻薬は軽症例というよりは重症な慢性片頭痛患者で有効な印象を持ちます。
急性期の頭痛軽減だけでなく頭痛日数を減らす予防的側面もありそうです。
副作用や中毒の報告もなさそうで、使用過多による頭痛の心配も少ないかもしれません。(これは可能性ですが、、)

マウスの実験では、慢性炎症があると神経細胞でのオキシトシン受容体の発現量が増えるようです。
またオキシトシンは慢性頭痛の大きな要因である疼痛の中枢性感作を抑える働きもあります。
これらが、慢性片頭痛の患者に対してより効果的であった理由ではないかと私は考えます。

オキシトシン点鼻薬とマグネシウム

これもマウスレベルの実験ですが、オキシトシン受容体の活性化にマグネシウムが関与しているようです。
マグネシウムは摂取により抗頭痛効果の知られている栄養素ですが、その理由の1つがオキシトシンとの関連かもしれません。
点鼻薬を使用する際にはマグネシウムの摂取も心がけたいですね。

まとめ

以上、鎮痛作用が期待されるオキシトシンに現段階でわかっていることをかいつまんでまとめました。
オキシトシン点鼻薬は研究段階で、日本での実用化はまだまだ遠いと思われます。
しかし、過去の研究結果からは重症で慢性の頭痛患者さんへの救世主となる可能性を秘めいています。
わからないことも多いホルモンなので今後の研究に期待したいですね。


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