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パイセン達のトンデモ指導

勤務医時代の事を思い出したので、続けて書きます。

僕が勤務していた大学病院の医局は、ほぼ自校出身の医者で成り立っていたので、みんな学生時代から知ってる先輩後輩が多かったです。良くも悪くもなあなあな感じで、体育会系のノリもあってか、あまり理論的ではない先輩の指導もあったと思います。

ここでは僕が先輩からうけた指導をご紹介します。論理的じゃないけど頷けるものだったり、ただのパワハラチックなものだったり様々です。

どれだけ救急車が来ても当直飯の事だけは忘れるな

先輩と当直すると、下っ端当直の一番の仕事は当直飯の確保、注文です。当直飯は当直の唯一の楽しみなのです。また、先輩の好みも周知しあうのも下っ端当直医の仕事です。「あの先輩はこの店の洋食定食が好きだぞ」「あの先輩は小遣い制だから安いファミレスね」など、下っ端どうしで情報を共有しあうのです。

どれだけ救急車が来ても、緊急内視鏡の最中でも当直飯の事は忘れてはいけません。そのお店の営業時間が過ぎてしまえば、ファミレスかコンビニ弁当になってしまう。内視鏡の準備の合間に弁当屋に電話してたりしてました。

この当直飯は荒れるから注文するな

前回のジンクスのお話をしましたが、人は己の不幸を何かのせいにしたがります。当直飯もその対象になりがちです。僕らの周りではチキンカツ定食だけは注文してはいけない当直飯でした。チキンカツ定食を注文した直後に食道静脈瘤破裂が搬送された時は、チキンカツ定食の恐ろしさを知りました。

飯の話ばっかしてますが、業務についての指導もありましたよ。

外来でおばあちゃんを座らせたらお前の負けだ

消化器内科の外来は数も多いわりには、終末期の癌患者さんなど一人に対して時間を割かなければならない局面もあります。
ぶっちゃけた話、落ち着いてる慢性疾患の患者さんに対して時間をかけてられないのです。
そこで先輩に言われたのは「冬場にシルバーカーをひいて診察室に入ってくるおばあちゃんを椅子に座らせたらお前の診察は遅いって事だ」という指導でした。つまりはゆっくり上着を脱いで、よっこいしょと椅子に座る前に検査結果を説明し、次回の外来予約を取れ、という事です。
ごめんね、おばあちゃん。でもそうせんと外来回らんのよ。

午前中にカルテ書いてる医者は暇な医者だ

一日の業務の中でカルテ記載というのは緊急を要するものではなく、時間があるときにこなすもの、といった位置づけになります。それよりも病棟への指示や入院患者さんの処置や救急外来での対応などが優先されます。
なので、午前中にカルテ記載をしているということは、そもそも午前中で全ての仕事が終わってしまうような内容の仕事しかしていないということになります。
この指導に関しては多少は理解できるのですが…(時間があれば午前中にカルテぐらい書いても良いような気もしますが)

8時以降に病棟にいる医者は無能だ

かと言えば8時までにはカルテ記載も含めた病棟業務を終了できない医者は無能であるようです。日中どれだけ忙しくても、8時にはカルテ記載やサマリー記載は終わらせて、8時以降は医局で論文執筆や発表の準備をしていなければいけないようです。
カルテを書く時間帯が限定的すぎてムズいです!

実際の現場では当然医学的な指導がメインなのですが、中にはこういったものもありました、というお話でした。

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