【病院で働くということ】・・・ Vol.20 スペシャリストとジェネラリスト:専門性と臨床能力
「医師として目指すべきはスペシャリストかジェネラリストか」
医師にとっては古くて新しい命題です。
著者は元消化器外科専門医です(と、機会があれば答えています)。
ただそれは一側面でしかなく、臨床医の肩書きの中で、何が得意かと聞かれた際の回答に過ぎません。
世の中にはスーパースペシャリストというか、その専門領域に驚くべき能力を発揮しているエキスパートがいます。
もちろんそれはすごいことですし、その名声を得るためにどれだけの努力とエネルギーを費やしたかを想像すると本当に頭が下がります。
でもはたして医師は自分の専門領域だけの診療ができればいいのでしょうか。
実際の現場では
臨床の現場では「この患者さんの治療をお願いします」と事前に確実な診断と治療方針が決められ、自分は求められる治療だけをしていればよいような状況はほとんどありません。
その疾患の周辺領域の知識や診療技術、鑑別診断から導き出される様々な対応、時には全くの専門外の領域への引き継ぎも必要となるかもしれません。
これらの対応をきちんとしようとするほど、診療に携わる時間は増えていきます。
臨床に携わる医師はこの状況から逃れることはできず、最近のタイパ・コスパ重視の若手医師に重症患者を担当することが多い診療科が敬遠されがちな理由の一因かもしれない、とも思います。
それでも、臨床医は自身の診断能力を高め、適切な治療方針を計画し、自分で治療を行っていくことが求められます。大変ではあるものの、治療を受けた患者さんが回復していくのを一番近くで見続けられることこそが臨床医のやりがいであり、医師冥利に尽きるところだと思います。
それでも自分の専門領域(ストライクゾーン)に来たボールだけを打ち返し、それ以外のボールには見向きもしない医師がいかに多いことか。
行き過ぎた専門医指向は医療現場には大きな弊害となります。
ジェネラルな視点を持つスペシャリストを目指せ
これから専門医取得を目指す若い先生方には、
「自分のところに来たボール(患者さん)は、たとえ自分には手に負えないと分かっても、しかるべきところにきちんと投げ返してあげられる」
ような臨床能力を是非身につけてほしい。
そのためには視野を広く、そしてコミュニケーション能力をどんどん高めてもらいたいと切に願っています。
地方の小規模病院でも、将来ある若手医師に臨床医としての能力を高めてもらえるよう、現場で教育が出来る指導医でいたいと思っています。
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