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【怪異譚】アサガオからの伝言

 「植物にも感情があるから、お花に水を与えるときには、『キレイに咲いてね』などの優しい言葉をかけてあげるとキレイに咲くんだよ」

 ということを聞いたことがあると思う。

 知人で小学校の先生がいるのだが、このことが本当なのかどうなのかということで、夏休みの宿題として、次のような課題を出したそうだ。

・クラスの全員が、朝顔の鉢植えを育てること
・その際に男女共に出席番号が前半の子は
「キレイに咲いてね」などの声をかけながら朝顔を育てること
・一方、出席番号が後半の子は朝顔には声をかけず、事務的に育てること

 その結果、声をかけたグループの朝顔の方が確かに花付きも生育もよかったそうだ。

 「ホラね、アサガオさんだって、やっぱり愛情を持って育てて欲しいんだよ。植物だってそうなんだから人間どうしではもっとそうしてほしいはずだよね」

 先生としては、朝顔の生育を通して、「みんな愛情をもって接しよう」という道徳教育にもなり、かなりの収穫だった。
 これで終われば、教育的には”よい話”で終わったのだが、大きな問題が残った。 

 朝顔に声をかけたグループの中でも、江本君のものは、他の人に比べると、生育、花の付き、花の色の濃さ、ともに群を抜いて、素晴らしかった。 

 先生も、それを見て「すごいね、江本君は、すごく愛情を込めて朝顔を育てたんだねぇ。じゃあ、どうやって朝顔を育てたか皆に教えて下さい」
 と、江本君に聞いた。
 江本君はモジモジしながら、朝顔に向かってこう言った。

「アサガオたん、いいよ、その表情萌え~(;´Д`)ハァハァ…」

 ・・・偏向的な愛情表現も、また愛。

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