新潟県三条市に伝わる話である。
さてさてとかなり生々しい話であり、子供の前では語ることが出来ない伝説である。
なかなか「遊女の商売道具」とか「陰部」などという語は、少なくとも「まんが日本昔ばなし」などでは聞かない。
耳なし芳一の話の様に、経文を身体に書くという話は聞くが、陰部限定とするのも珍しい。
怪談としてではなく、奇談として伝わっているのも、この艶っぽさゆえであろう。
郭話の一種なのだろうが、色々とあった噂が、この話に入っており、話としては少し乱雑な感じもする。
もともとは、話としては、美しくて教養があり、家柄もよいという女郎、小奈津がいたという話。
素性の知れない、美男子侍、伊織というものが、すごく絶倫性豪だという話。
衰弱していく女郎に祟られていると言って、坊さんが陰部に呪文を書く話。
という三つの話があり、それぞれに噂されていたのではないか印象をうける。
特に、坊さんが陰部に呪文を書くなどという話は、好色坊主の鉄板ネタなのでは無かったかと思える。
で、この3つの話を、上手く組み合わせて、話に奥行きを持たせたのではないか。
かなり芝居じみた話でもあるので、実際に当時、語っていた芸人がいたのかもしれないとも思える。
さて、現代の新小路であるが、遊郭などは無いが、飲食店や飲み屋などもいくつか見ることが出来、繁華街として、そこそこに賑わっていたのだろうなということを感じさせる。
かと思うと、すぐそこには本願寺三条別院の他にも寺がいくつもあり、なるほど、このようなところでは、坊主が陰部に呪文を書く話などは想像しやすいなと思わせる。
新小路なるところは元々は川が流れていたそうだが、暗渠にして埋めた小路だそうだ。
”新”とは名付けられているが、伝説の通り、江戸時代からすでにあった。
ただ、この近辺では比較的新しい小路ということでその名が付いている。
元が川なら、水も豊富にあり、カワウソも化けて出やすいだろう。
案外と、美男子にカワウソが化けたというのも、川が埋め立てられ、風情が無くなっていく風景のメタファーなのかもしれない。