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【ふしぎ旅】名立漁港

 新潟県から富山県まで日本海沿いに国道8号線を走ると、多くの観光客でにぎわう道の駅”うみてらす名立”があり、その手前に名立漁港がある。

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この名立漁港では、戦後まもない昭和24年(1949年)3月末、非常に不幸な事件が起きている。
 春の穏やかな日、この田舎の海岸に、ドラム缶のような赤黒い物体が流れ着いた。
 実は、これは国籍不明の機雷であった。
 通報を受けた近くの巡査が、回収しようと試みたが、機雷は爆発。
 この爆発により、巡査や見物人など63人が死亡した、 
 その時は、春休み中ということもあり、死亡したものの大半は小中学生であったという。

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 あまりにも、痛ましい事故であり、漁港の一角には供養のための地蔵尊と、機雷爆発の地碑が、建てられている。
 機雷爆発の碑は、当初は爆発したところに建てられ、その後、道路拡張工事などにより現在の所に移転された。

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 漁港を訪れた人や地元の人などは分かるだろうが、そのことを知る者は、新潟県民でもそれほど多くはないだろう。

 あまりにも不幸な事件は、その悲惨さゆえに密かに語られ、怪談になることが出来ないのだ。
 
 怪談とは、生活の中で語られるものでなく、言うならば外部の者に語られるものだ。恐怖とは、まさしく外部との接触によって生ずるもので、生活の中で語られる心霊体験は無いとは言わないが、その大半が恐怖でなく、悲話として語られる。

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 今は穏やかな海岸線を、眺めながら、そんなことを考えたのだった。

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