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Prosit!

 新潟県に住んでいて良かったと思うことの一つに、酒が美味しいということがある。
 日本酒ということではない。
 もちろん日本酒も美味い。クセが無く、米のよい香りがする日本酒は、スルスルと喉を通る。

 しかし、だ。
 実は新潟で美味しいのはビールであったりする。
 ご当地産のクラフトビールでは無い。普通の缶ビールが美味いのだ。

 とは言っても、缶ビールの味そのものが、何か変わるわけが無い。
 ビールを美味しくさせる”つまみ”が存在する。

  夏は言うまでもない。枝豆だ。
  新潟県民の枝豆の消費量は日本一だと言う。
  大体、夏になると、一人当たりの1日の枝豆消費量が丼ぶり一杯分くらいが普通なのである。
 そして、それをあっという間に平らげるほど美味い。

 朝、収穫した枝豆を、午前中にゆで上げて、冷蔵庫で冷やしておくのが一番美味い。

 塩味は少し強めに。2口、3口とサヤのまま、口に枝豆を放り入れる。
 かじると豆の旨味がある甘さと、太陽そのままの香りが口の中に広がる。
 よく冷えたビールを、流し込むように飲む。
 それを繰り返す。
 あっという間に、枝豆の殻と缶ビールの山ができあがる。
 新潟県民にとって枝豆とビールの組み合わせはドラッグよりも常習性が強い。

 秋も色々と美味いつまみはあるが、非常におススメのつまみがある。

 お祭りだ。

 お祭りの時に飲む酒には独特の美味さがある。
 花火を見ながら飲む酒、屋台の焼きそば、たこ焼きなどをおつまみにして飲む酒は美味い。

 とりわけ、オススメが「にいがた総おどり」だ。
 2002年から始まった踊りの祭典で踊り手の総数15,000人。
 そのほとんどがプロではなく、一般の人達、あえて言うなら民衆だ。
 ただ、好きだから踊る、その熱量に同調して、20万人の観客が盛り上がる。
 万代をはじめとした会場は、普段は普通の”道路”だが、そこが、熱い踊りの波と化す。

 見ている方も熱くなる。
 そして、いつしか観客も踊っている。

 そんな会場で汗だくになりながら飲む一杯のビール。
 美味しくないわけがない!

 万代を包み込むあの熱気は圧巻であるし、スタッフ、踊り子、観客の皆が笑顔ということも素晴らしいお祭りだ。

 さて、以前にも書いたがこの”にいがた総おどり”が、新型コロナウィルス禍により、存続の危機にある。
 今回の新型コロナウィルス禍において、新しいエンターテインメントの形が模索されてはいるが、今までのエンターテイメントが無くなってよいわけがない。

 とりわけ、”踊り”や”お祭り”などは、もっとも人間らしい営みである。
 それが”密”という言葉で否定され、中止を余儀なくされ、どんどんと卑小になっているのが現在だ。
 確かに、お祭りなどは、”今日”を生きるためには必要でないかもしれない。しかし、豊かな”明日”を作るためには、必要なものだ。

 人間らしく”笑い”、”泣き”、”感動する”、それが”生きる”ということだと思う。
 その「生きる力」のために、お祭りは必要だ。
 だからこそ、このお祭りの存続に少しでも力になれれば嬉しいし、力になりたいと思う。

 そして、いつか、また普通にお祭りが楽しめる日が訪れたら、会場で汗をかきながら、美味いビールを飲みたいと切に願う。

「乾杯!」


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