【ふしぎ旅】行塚の大ケヤキ
新潟県新潟市(旧潟東村)の県道218号沿いに、大木がある。行塚の大ケヤキと言われ、
次のように伝えられている
後奈良天皇は15世紀終わりから16世紀中ごろの天皇なので、時代としては戦国時代であろうか。
疫病退散や、その他の災厄退散を祈願して、自ら仏となる即身仏を伝える、行人の塚の話は、全国各地にあり、この話もその一つである。
この話が独自性を持っているのは、そこに大木が植えられ、非常に目立つということだろう。
行人塚、入定塚と呼ばれるものは多くある。
即身仏として、取り出されるものもあるが、伝説では、そのまま塚の中で読経して、声が次第に聞こえなくなり、そのまま、その場で仏となるものも多い。
塚や塔などが建てられればよいが、中にはただ土が盛り上げられただけのもの、空き地として風雨にさらされているものもある。
そのような中において、この欅は、塚の目印にしては、あまりにも目立ちすぎている。
むしろ、この欅に自然の神よりの大きな力があると感じ、その力を拝借しようと、そこで入定したのでは、と思わせるほどだ。
そもそも、行人の塚というのも言い伝えであるので、この欅の持つ力は、行人の祈祷の力に匹敵すると考え、そのような伝承となったということも考えられなくはない。
欅の周囲には地蔵が立ち、古くから根付いている信仰だと感じさせる。
現在では、欅の大枝は、自重に耐えられないおそれがあり、補強しているが、かつては葉が密に茂り、夏の強い日差しをやわらげ、その下は暗いほど涼しく、疲れた身体にはありがたかったであろう。
しかしそのような、炎天下の下にある薄暗い空間は、非日常的なものに強く感じられ、心に迷いがある時、一人のときなどは、怪異を感じやすい。
白昼夢のようにウツラウツラする中で、虫の声や、近くの道の振動音など、地面の中から何やら音が聞こえれば、それが念仏のようにも感じられ、それがいつしか行人が入定したという話になったとも考えられる。
その辺りに関しては、それこそ大欅に聞いてみないと分からないことではあるが。
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