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【ふしぎ旅】剣桂

 福島県甲子道路、国道289号より、少し外れた旧国道289号沿いに大きな桂の木がある。

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 桂の木には、口伝にて、このような話が伝わっている。

 むかし、ここに鬼神があらわれ、甲子路を旅をする人を苦しめたので時の城主、松平楽翁公が、旅人の難儀を救うため、剣をもって鬼神をこの木に封じ込めたという

  桂の木の樹齢は約370年、周囲は5m、6mの幹からなっている。
 山中の安全と繁栄を祈願したものという。

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 現在では、福島県西郷村の地域のシンボルとして「森の巨人たち百選」という全国の中から地域を代表する原生樹として知られている。

 実際に訪れてみると、ここが昔は国道であったのかと思うほど、細い道を行く。川沿いの森の中に、桂の木はあり、明らかにその存在感は際立っている。

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 現在でも、夜はあまり通りたくないような鬱蒼とした林の中にあるのだから、電灯もない時代にあっては、かなり気味が悪く鬼神の類があらわれても、不思議はない。

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 桂の木には、何本かの剣が奉納されている。剣といえば不動明王などと思うのだが、松平楽翁(松平定信)にあやかってのことだろうか
 なんでも、木の洞の中から、退治した時の剣が見えるなどと伝えられている。

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 松平定信というと「寛政の改革」などの政治手腕ばかりが話題にのぼるが、さて鬼神を退治するほどの武芸の腕があったのだろうか、ということが気にかかる。
 彼は、後世に自分の名が残るように、都合のよい逸話を自らプロデュースしたことでも知られているから、おそらく、この伝説も、その類のものなのだろう。
 この辺りは、白河のすぐ近くだから、悪い噂が立つと自分の名も傷つくことになる。
 盗賊などがあれば直ぐにその対策をしたことだろう。
 その、目印として、この桂の木の、神々しくもある姿は、うってつけの目印となったであろう。

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