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【ふしぎ旅】郡殿の池

 新潟県小千谷市の山中、細い山道を行くと、山の中に池がある。
 この池には、このような伝説が残されておる

 昔、関山に郡の役人である郡司の館があり、人々は郡司を「郡殿(こおりどん)」と呼んで敬っていた。
 郡殿には美しい姫がいた。ある日、姫が外を眺めていると吉谷の山の池の主が姫をみそめてしまった。
 翌日、立派な身なりの若者が姫を訪ねてきた。
 郡殿も、若者をこころよく思い、その後も二人が逢うのを許していた。
ある日、若者は郡殿に向かい「私は吉谷の山の池の主ですが、姫の美しさにひかれ、人間の姿になって逢いに来ていました。
 ぜひ、私の嫁にいただきたい」と頼んだ。
 郡殿は驚いたが、姫は「あんなにも私を思ってくださるのだから」と嫁に行くことを承知した。
 こうして姫は池の主と結婚したが、それからこの池を「郡殿の池」と呼ぶようになった。
 郡殿は一人娘を池の主に嫁にやってから、郡司をやめて百姓になったが、この家の田圃はいくら日照りが続いても水が枯れず、大水が出ても水が増えず流されなかったという。

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一説には、娘では無く、奥さんという話もあり、池の主による寝取り話かと考えると興味深い。

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 池のほとりには弁天様が祀られており、浮島がいくつも浮かんでいる。
山中でここまで大きい池があるのは、あまりお目にかかることはないだろう。

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 傍らには小さい池があり、池の畔にも碑石がおいてある。おいよの碑と呼ばれるものだ。
 おいよという美しい娘が幼いころに郡殿の池の主に見染められ、14歳の時に郡殿の池につながっているという焼田の淵に飲み込まれて、龍となったという話が残っている。
 池の主は、案外と好色のようだ。

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 池の周りはいまでも、叢が深く、池の主と呼ばれる蛇が闊歩しており、私が訪れた時も、大きなシマヘビが前を通り過ぎていった。

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 池までの道では棚田を見ることも出来、これも郡殿の池のおかげかと思った。

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