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【書評】天才プログラマーが逮捕された事件の裁判の模様が描かれる「Winny」

こんにちは、サカモトです。

今回は、Winny事件の裁判の模様を描いた本「Winny」の紹介です。

この本を読もうと思ったのは、現在映画化されてるからですね。実は大分前に読んでいて、読み返したものになります。

映画の予告はこちら。

Winny事件

Winnyというのは、動画ファイルや音声ファイルなどを手軽に匿名でやり取りできるようにしたソフトウェアです。今と違ってあまり良くないネット環境の中で、気軽にファイルをやり取りできるということでかなり流行ったんですが、違法な動画や音声楽曲ファイルなどのやり取りに使われてました。自分も少しだけ使ったことがあります。

そんなわけで、CDなどの売上の減少に影響したとまで言われていて、音楽業界などはWinny対策にかなり力を入れていて、そうした影響からWinnyの開発者の金子勇さんが著作権侵害の幇助の罪で逮捕された事件です。

ナイフが危険で人殺しに使われた場合に、ナイフを使った人に罪を問うようなものだと思うのですが、そうした無理を押し通して、開発者を罪人に貶めようとした事件です。

作者

この本の作者はWinny事件の担当弁護士方です。変わっているのが、当時出てきたばかりのブログで当時公開しているところですね。文章も法曹界の人というと、お固い文章というのが定番ですが、下町のおじちゃんのような親しみのある文章で、とても読みやすいですね。

当時、事件そのものはかなり注目を浴びたので、ブログも反響を呼んだんじゃないのかな。すみません、当時ブログの存在を知らなかったですけど。

この話は、天才プログラマーと呼ばれた男の話である。

彼の名前は「金子勇」という。今から少し昔にファイル共有ソフト「Winny」を作った人である。

私は「壇 俊光」。彼の元弁護人で、この話の狂言回しである。

「Winny」プロローグ

内容

Winny開発プログラマーの金子さんとどのようなやりとりがあったかや、どんな人となりだったのか、具体的なエピソードを交えて語られています。このあたりは担当弁護士でしか書けない話でしょう。

当時、どのくらいの頻度で書かれたのかは分かりませんが、リアルタイムで読んでいたらと思わずにはいられません。リアルタイムで読みたかったなと。

それから、裁判で検察や裁判官とどのようなやりとりがあったのか克明に描かれていて、かなりの嫌がらせを受けていたのが分かります。こんなことを書いてしまっていて大丈夫だったんだろうかと心配してくれるレベルです。

裁判の問題点を浮き彫りにしている

この本は読み物として読み応えがあるのですが、それだけでなく、日本の裁判の問題点を浮き彫りにしているところも特徴としてあります。

これは裁判だけではないと思いますが、裁判官は技術的なこと、テクノロジーのことを全然分からない状況で裁判を進めていることが描かれます。詳しくない人が、罪があるのかないのか裁くということはおかしいと思うんですよね。

なんか、こうしたことは日本のあらゆるところで見られることだと思うんですよね。裁判の結果についても意見はあるのですが、一番の問題は詳しくない人が裁く、そのことが問題だと思います。これはなんとかならんもんですかね。

最後に

Winny の開発者の金子さんは最高裁で無罪を勝ち取って、約半年後に突然亡くなるのですね。そして、本書の最後に、作者から金子さんへの手紙を書く形式で想いを綴っているのですが、それが感動的です。

一部抜粋して紹介します。

あれから、Winny事件でなぜ勝てたのだろうかって、ときどき考えるようになりました。いろいろ考えるのですが、金子さんが「プログラム馬鹿だったから」じゃないか? と思うのです。 私は、欠陥人間と言われて育った凡人です。ただ、金子さんが、プログラム馬鹿だから、何もできない人だから、そういう金子さんを助けたいという想いが、私にあの一瞬だけの特別な力を与えてくれたのではないだろうか? いつも結論は、そういうことになります。

「Winny」より


久々に読み返してかなり面白かったので、映画も見に行こうと思ってます。

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