新スタジアム建設の関係者からの視点で描く「アンビシャス」がいいぞ!
こんにちは、サカモトです。
エスコンフィールドHOKKAIDO
北海道日本ハムファイターズの新スタジアムであるエスコンフィールドHOKKAIDOが今年3月にオープンしました。昨年、新球場については、エスコンフィールドの本塁からバックネットまでの距離が規定を満たしていないということで騒がせていたことでニュースを目にした人は多いでしょう。
なお、新しいこの球場は、北広島市の公園用地に建設されていて、球場を中心とした街づくりが行われているとともに、球場自体にサウナ温泉施設を備えていて、サウナ温泉に入りながら野球が観戦できると言う画期的な球場になっています。これは気持ちよさそう!
さて、昨年度まで日本ハムファイターズは札幌にある札幌ドームを本拠地としていたわけですが、当然ながらそこを離れ、新しいスタジアムを建設し、そこに本拠地を移動させようという判断があり、そこには当然ながらさまざまな人間ドラマがあったことが想像されます。その人間ドラマを見事に描ききっているのがこの本「アンビシャス」です。
作者
実は、この本の作者は以前紹介した中日の監督を務めた落合さんを描いた「嫌われた監督」の作者で、めちゃくちゃ文章がうまくて、この人の本は読みたいと思っていたところの新刊でした。今回もめちゃくちゃ良かったです。
本の内容
この本では、日本ハムファイターズの職員はもちろんのこととして、北広島市役所の職員、札幌市の職員、日本ハムの本社の役員など多くの関係者からの視点で展開していきます。関係者が多いので、取材は大変だったのではないかと想像されるのですが、それだけでなく、主要な人たちはなんと高校生まで遡って描かれます。
なんと、北広島市役所の新スタジアム建設で重要な役割を担った企画財政部長は、高校時代北海道の進学校の札幌開成高校に進学しながら、初めて甲子園に出場し、ミラクル開成と言われるようになる経歴が紹介されます。普通、そんなドラマ的な設定って本当にあると思いますか。なんか作ったような設定じゃないですか。
さらに、その部下はミラクル開成に憧れ、札幌開成高校に進学するも甲子園出場できなかった経歴になるという。そんな二人が新スタジアム建設に向けて重要なポジションを担うというおまけまでありました。そんなことがあるんですね。
日本ハムファイターズが札幌ドームを出た理由
日本ハムファイターズがなぜ札幌ドームという球場がありながら、なぜそこから出たのか。この本を読むまでよく分かりませんでしたが、この本を読んでよく分かりました。
まず、札幌ドームは2002年の日韓ワールドカップのためにサッカースタジアムとして建設されていて、野球専用の球場ではなかったこと、
また、サッカーは天然芝であったものの、野球は人工芝で選手の疲労が激しかったこと、
日本ハムファイターズは札幌市の持ち物で球場が自由に運営ができなかったこと
などがあったようです。
ただ、一方で札幌市は200万人の人口を抱える大都市であり、観客を集める意味でも有利な点はあって、また新球場には寒冷地ということもあって、建設には莫大な費用がかかるということで本社から反対されたりする中で、球団職員が新スタジアム建設に向けて動いていくところが読み応えがあります。
北広島市の何もないという利点と大都市の意外な弱点
球団が新スタジアム建設構想を打ち出すと、北広島市と札幌市が手を挙げるわけですが、北広島市は人口5万人に対し、札幌市は人口200万人ということで一見すると全然勝負にならなそうですが、札幌市は用地の選定がなかなか進みません。
そして、日本ハムファイターズはただ球場を作るのではなくて、スタジアムを中心とした街づくりをしようとしていて、それにも合致するのはどちらかという視点で進められます。
その視点でいくと、大都会札幌市が弱点となり、北広島市が何も開発されていない大規模な公園用地が提供できることが決め手となって北広島市が選ばれることになります。つまり、圧倒的に有利と思われていても、視点を変えればそれが不利になるし、その逆もありうるということがよく分かります。
多くの関係者の読み応えある人間ドラマと新スタジアム建設にあたって何が有利不利となるかは分からないというところがこの本の読みどころだと思います。読み応えがあるので、是非とも読んでみてください。
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