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ハウスメーカー対工務店、ファイッ!

このnoteをここまで読んでいらっしゃってる皆さんは、注文住宅を建てようかなどうしようかなと思ってらっしゃる方が多いかなと思っています。
では、注文住宅、ハウスメーカーと工務店、どっちで建てたほうがいいの? という話です。
ただし、工務店の場合には設計事務所に設計を依頼して工務店が建築を請け負うというパターンがありますがそれは除外します(設計事務所で家をつくる、というパターンはいずれ別記事で書こうと思います)。


HM対工務店どっちがいい問題→結論:その人によります

身も蓋もありませんが、ハウスメーカーが合う人、工務店が合う人がいますので、その人によるとしか言いようがないのですが、それでは困っちゃうよということで、ハウスメーカーに向く人、工務店に向く人はどんな人か書こうと思うのですが、インターネット上にはたくさんの「HMと工務店どっち問題」を書いている記事がありますので、ここでは、見落としがちなHMと工務店それぞれのメリットデメリットを書きたいと思います。それを見て、皆さんはどちらに当てはまりそうか、考えてみてくださいね。

想定するハウスメーカー

積水ハウス
セキスイハイム
ダイワハウス
住友林業
ミサワホーム
一条工務店
ヘーベルハウス
パナソニックホームズ
三井ホーム
トヨタホーム
・・・といったところでしょうか。いわゆる大手HMというところです。坪単価で言えば70万円~100万円というところですね。
このあたりのクラスであれば、基本的な構造、耐久性、気密・断熱性能は有しています。そして、下請けの管理が(まあまあ)良いので、実際の工事もさほど心配ないかと思います(※注意は必要)。
と、ここで実際の工事には注意が必要ということについて少しお話しします。
別の記事で掘り下げようと思いますが、ハウスメーカーでは大工さんを雇用していません。実際に建築をしてくれるのは大工さんですが(これもまた別の記事にしますが、本当の実際には大工さんではないこともあります。大工さんじゃなくても家は建つのです)、いわゆる下請けということになります。もちろん下請けの下請け、孫請けとかになることも。そういう複雑な仕組みでもある程度の水準の末端を使えるのが大手HMです。格安HMの実際の現場を見ると、ちょっとびっくりするような作業をされてたりします。
なので、HMはなるべく大手を選ぶ方がいいと思います。

想定する工務店

工務店の場合、建築方法は(ほぼ)選べませんので、どこに差があるかというと、その性能になるわけですが、これはほとんど坪単価に現れますので、安いところは選外になります。
少なくとも高気密高断熱、パッシブなどを掲げていないところは、お値段お安めですが却下です。これは今や当たり前なのでこれができないとなると、ふた世代は前から進歩がないということです。標準でトリプルガラスの窓がつく、軒ゼロの家を作っていない、など熱に関して意識が高いかどうかがポイントです。いつか書きますが軒ゼロはいろんな面でやめておいたほうがいいです。
また、無垢素材が得意なところのほうが信頼性が高いです。工務店はほぼ在来工法ですから木をたくさん使います。良い木を仕入れることができるか、木材問屋に信頼されてるかというのが、良質な無垢材を多用できるかで判断できます。国産の無垢材を推していれば、問屋と良好な関係だろうと思われます。
そうなると、坪単価はやはり最低でも70万くらいになってきます。

HMと工務店、ポイント3つ

では、想定されるHMと想定される工務店のどっちが良いのかどこが良いのか、ポイントを3つに絞って書いていきますね。
ポイント1 契約までの下調べ
ポイント2 設計段階の時短、省力化
ポイント3 自由度

契約までの下調べ

もちろんいろんないいところがあって、HMも工務店も多くの人に選ばれているわけですが、ググるとそういうのはたくさんヒットしますので、ここでは見逃しがちなところを書いていきます。
まずHMの良いところはどんな家が建つか想像しやすい、ということです。それも、見学を頑張ればかなりの精度で出来上がりの予想ができます。ネットにもたくさんの事例(個人ブログなど)がありますので、HMのできることできないことや交渉のやり方まで丸わかりです。設計の段階で事前に収集できる情報量が圧倒的です。HMをめちゃ頑張って研究してる施主さんは、HMの営業よりも仕様やオプションについて詳しかったり、キャンペーンを熟知してたりします。HMの情報収集の容易さは、施主にとってはかなりのメリットとなるでしょう。あらかじめこちらが情報量を多く持っているというのは、かなりのメリットです。
ところで、皆さんはレモン市場をご存じでしょうか。
以下に説明を置いておきますが、簡単に言えば「売り手と買い手の持ってる情報の格差が大きいため、売り手だけが適正な価格を知っており、品質に見合わない高値で売り出している状態。買い手は購入した後にその価値が無かったと知ることになる。そのような品質の悪いものが市場で増えていってしまう」というようなことです。

住宅は一見、見える部分に大きなお金がかかっているように感じますが、実際にたくさんの予算を使うのは見えない部分です。HMであれば、建物の基本的な部品は工場で生産されます。いいことを言ってもそれが本当なのかどうか、消費者にはわかりません。工務店であれば大工の腕前は、同じように消費者にはわかりません。そのような情報の格差があるため、売り手であるHMや工務店は決めた価格に対してコストを減らして提供することが可能です。
そのような情報格差をできるだけ減らすためには、情報をたくさん集めることです。HMはその点、ネットを活用することと、完成品や建築中の商品そのものを見学することができるため、有利といえます。

では工務店はどうでしょうか。ネット上の情報は少ない、完成品もそう多くはないので、その方面の情報は集めにくいです。しかし、工務店というのは地元密着というか営業範囲が狭いことが多いので、会社の評判、社長の評判というのはより精度の高いものを入手することができます。社長宅が事務所も兼ねているというようなこともあるでしょう。社長の暮らしぶりが不相応に贅沢であれば、それは施主の支払う代金による贅沢ですので、つまり不当な値段で受注したということでしょう。工務店は出入りの業者も同じところを使いがちです。水回りなどを請け負う業者も地元のことが多いでしょうから、出入りの業者がどのようなところか、当たってみるのもいいでしょう。
工務店の情報収集は、その社長が信頼できるか、その会社がまっとうな運営をされているか、そのようなところを中心に集めていくといいと思います。

契約までの下調べ、情報収集というところでは、HMと工務店では、収集すべき情報、収集できる情報の種類や質に差が出るということですが、あなたはどちらの情報収集が得意でしょうか。または、あなたはどのような情報を信頼するでしょうか。

時短、省力化

次に契約してからのお任せ度、どのくらい手間がかかるかという話です。
HMは設計時にお任せできる部分がかなり多いです。間取りなどは基本的に向こうで考えてくれますし、たくさんの実績の中から生まれた標準的なプランの引き出しが多いので、ある程度正解に近いようなプランを最初から出してくれます。その上で手直ししていくというのは、イチから考えるよりもはるかに楽ですし、もとになっているプランがそれほど的外れではないので、出来上がりまでの時間も短くて済みます。また、インテリアコーディネーターがついてくれるのが普通ですし、向こうから提案してくれるものが多いです。
また、トレンドな家を作るのが上手なので、自分でいろいろ調べずとも、時流に乗った家をつくることができます。流行だけでなく、最新の補助金や助成金情報なども、しっかり教えてくれるでしょう。そういうのは得意です。
選べるオプションも最初に提示されたものの中から選ぶという形なので、割とスムーズに進むと思います。施主支給できるもの、範囲が工務店に比べて多くないので、仕様を決めていくときには早く進みます。外構もだいたいこんな感じ、というレイアウトから詰めていきますので、早いです。
この早さというのはHM側の都合でもあるため、施主が進行のため営業担当設計担当を通して調べさせるとか動かすとかすることが双方の利益になりますので、ぐいぐいと動いてくれます。
HMからの提案について修正したり、選択肢から選んだりという感じで進行していきますので、省力化や時短をしようと思えばかなり早く進みます。
余談ですがその早さの極端な例が建築条件付き住宅で、更地を買いますが契約して3か月で着工してしまいます。設計期間が3か月、つまり90日ということでずいぶん時間があるなと思うかもしれませんが、打ち合わせは多くて週に1回、せいぜい10回くらいの打ち合わせで全部決めなければいけないとなると、一回当たりの決め事の量がかなり多い印象になります。ぐいぐいと決めていかないと終わりません。しかしこれが大変かというとそうでもないようなんですね。打ち合わせが面倒だとか、割とオススメプランで気に入った、あるいは不満が出なかったということで壁紙や外壁、キッチンやバスの仕様などをポンポンと決めていって、3か月で納まるのです(そういう施主が多くないと建築条件付き住宅が成立しません)。このへんの手法は、流石だなと思います。なので、時短や省力化、あるいはもっと単刀直入に設計の打ち合わせや決め事が面倒だという皆さんは、HMは強力な味方になってくれると思います。

片や工務店ですが、時短や省力化というところではHMに大きく見劣りします。(もちろん全部ではありませんが)社長の身の上話から始まり、家づくりの理念や会社の方針やその他もろもろを聞かされたりします。家族構成や趣味のような個人情報までしゃべらないと気が済まない社長さんも多いです。工務店の多くは零細企業(零細企業は社員数20名以下と定義されているので、多くの工務店はここに入ります)なので、建築を発注する、受注するというよりも、個人としてお付き合いしていくというイメージを持たれている社長さんが多いのではと思います。
このようなスタイルですから、打ち合わせの回数は増え、期間は伸び、決め事は限りなく……というようになりがちです。もしその工務店が「標準仕様」などと言って名前を付けている仕様を提示している場合でも、それは「このエリアで一般的な家族構成だとこういう感じになりますよ」という程度で、やはり注文住宅であることに違いはありません。
工務店は注文住宅を建てるのが当たり前ですので、施主には細かいところまで決定権を与えようとします。良い工務店であればなおさら、施主の注文を最大限取り入れながら性能の良い住宅を建てようとしますので、そのギリギリのラインを狙ってバランスさせようと努力します。また、工務店が施主の要望をできるだけ取り入れようとする理由として、地元での評判に直結するからというのがあります。実際に建ちあがってから施主が「ここはこうしたら」「これはこうだったら」ということを減らすためにも打ち合わせの回数は増え、期間が伸びる傾向にあります。

となりますと、時短、省力化というのは、HMのほうに軍配が上がるようです。最近ではタイパという言葉もありますし、時間をどう捉えるかによりますが、HMのほうが多くの人にマッチするかなと思います。

自由度

HMでよく聞く話ですが「このメーカーのキッチンを入れたかったんだけど、HMでは扱いが無かった」「壁はタイル張りにしたかったがタイル調のサイディングを勧められた」「壁の位置をずらしたかったが構造上無理だと言われた」など、できないということが、意外とあるのがHMです。
中には「どうしてもこのメーカーのキッチンを使いたいから、選択できないHMは検討から外した」などという家を建てるのかキッチンがあるハコを建てるのかよくわからないようなブログ記事があったりして、HMで建てるときにこだわりが余りに強いと、設計段階でもめるだろうなあと思ってしまいます。
最近のHMはかなり自由度が上がってきており、施主支給にも柔軟に対応してくれるようになっています。しかしなぜ上記のような「できない」が発生してしまうのでしょうか。その理由のひとつが、ハウスメーカーは、その名の通りメーカー、つまり製造業だからです。
HMは工場で家の部品を作っています。壁や屋根を作っているんです。それは工場で作りますので、規格があります。自由設計にならない理由のひとつがこれです。また、仕入先というのもかなり厳格に決められています。なんでも仕入れるわけにはいきません。在庫を置かなければいけない、補修部品も長期に在庫する必要がある、違う仕入先から同じような製品を仕入れるのは無駄であるし、仕入先によっては仕入れる商品ラインナップを絞る必要があるなど、そこにはメーカーとしての理由があります。各HMの注文建築を名乗るラインナップを見ても、注文と言いながら基本仕様があり、それに対してプランを変更していくスタイルなのはそういう理由があるからです。
HMの家を実際に地面の上に建てるのは下請けの工務店なのですが、そのメインの部材を供給するのはHMです。ですから、基本的に工場から出てくるものや本社購買のものは変更しにくいです。逆に下請けの工務店にやらせる範囲であれば、自由度が高いです。造作の棚や施主支給の照明器具など、工務店がやるもの、市販のものを置くだけのものなどは柔軟に対応できます。

それとは対照的に、工務店では、工場を持たないために家そのものが完全に自由設計になります。ちゃんとした設計ができてちゃんとした大工さんを抱えている工務店であれば、家は910mm刻みでなくとも建てられます(が、相当な理由がないとやらないと思います)。
断熱材をグラスウールかウレタンか指定することができたり(これはHMでは選択できないことが多いです。工務店でもできないところがありますが)、キッチンやバスや窓などでもメーカーに縛られることなく採用できますし、壁も最新の商品から昔ながらの漆喰まで、何でもござれです。細かいところでも、洗面ボウルや照明や蛇口や……と、値段を別にすれば、マイナーなメーカーだろうが海外製だろうが市販されているものであれば採用できないものはないと言っていいでしょう。もちろん安全性や信頼性などをクリアすればという条件付きですが。
工務店が作る家は基本ワンオフ、一点ものなので、自由度が高いというよりも、ひな形が無いというイメージでしょうか。

というわけで、自由度では工務店のほうが有利でしょう。自分の想いを詰めこんでほかと違うオジリナルの家を建てたいんだという方は、工務店を選んでみてはいかがでしょうか。基本プランから変更できる部分を変えていけば十分に自分なりに理想の住まいになるんだという方はHMもいいと思います。

それにしても暑いですね

HM、工務店、どちらにしても高気密高断熱は絶対条件です。トリプルガラスもぜいたく品ではなくて必須の装備です。
いま、外気温が三十と何度でしょうか、今日も日中は30度台後半になるのでしょう。冬も日差しとちょっとの暖房で快適な我が家ですが、夏も断熱と空気の循環を考えて1台のエアコンで家中が涼しく快適です。
高気密高断熱バンザイです。

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