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ポモナファームの取材後記と、トマトケーキのお知らせ

友人のフォトグラファー、橋原くんから「美味しいトマトがあるよ」と話を聞いたのは数年前のこと。彼がポモナファームのwebサイトを撮影したのがきっかけで、トマトの味に感動したという話を聞いて以来、頭の片隅に残っていました。

時は流れ私が夏にトマトケーキを作るようになり、それならばこの機会にぜひ行ってみたいと話していたら、webメディア ジモコロさんが取り上げたいというお話をくださって、今回は取材を兼ねて行くことに。

取材記事はこちらに貼っておきますが、noteでは私が個人的に感じたことを記しておきます。

正直なところ、最初はポモナファームさんが、想定していた「農家」のイメージとは少し違ったので、doyoubiとして取材するべきかどうか迷いました。

水ではなく湿気でトマトを育てていること。ぺりっとめくれるくらいのごく少ない土の中で、薄い根っこを張り巡らして作られていること。コンピュータによって湿度をコントロールしていること。

農法としては本当に画期的ですが、自分の知っている「トマトを育てる」イメージとは少し違っていて、そこに戸惑う自分がいたのは確か。doyoubiとして紹介する農家さんとして、読者の方やお客さんが抱くdoyoubiらしいイメージに合うのかどうか、不安でした。

けれどそう考えること自体、わたしが知らぬ間に偏見を持っていたからなんだなと、代表の豊永さんのお話を聞きながら自省。

夏の異常な暑さと、雨が降らない、降ったと思えば豪雨になるなどの気候変動の深刻な問題。これからも農家さんを取材していくたびに聞く話題だと思いますが、そのくらい今の時代に野菜を育てるのは難しいことなのだと、素人の私でも理解してきています。

その中で、気候変動に立ち向かい、新しい形で野菜を作ろうとしているのがポモナファームのモイスカルチャー。

けれど「コンピュータでコントロール」という一面だけを切り取ると、機械的なトマトだとか、土臭さがないとか、やはりマイナスな印象を持たれがち。実際私もその部分で最初抵抗がありました(実際お話を聞けば、人の手によって大事に作られているものだと理解できたのですが。)

そういう偏見があるのはやっぱり、今までとは違う画期的な取り組みだから。電子書籍が出たときに、それでも紙の本が良い、デジタルなんて本じゃないという批判が出たのと似たような現象だなと思います。

結局のところ本でいえば、紙と電子が今はどちらも共存しているし、それぞれに良さがあること、どちらもあることに意味があるという風に皆が理解するようになってきましたが、それならポモナファームに関しても同じ。

本の話でいう「電子」の立場なら、紙(従来の作り方)もあるけど電子(モイスカルチャー)もいいよねと。いつかどちらも共存することが当たり前になり、それにより日本の農業を取り巻く環境が少しでもいい方に向かって行くならば、そんなポモナファームをあえてご紹介するのも、doyoubiらしいのではないかと思い、取材をさせていただくことにしました。

そしてポモナファームの紹介を通して伝えたかったことはもうひとつあり、それはやはり気候変動によって農家さんが直面する厳しい現実について。

天気に対して自分が何かできるわけではないのですが、その無力さも含めて、ただただ現実としてシェアしていくことに意味がある、気がしています。

豊永さんは「私たち消費者がトマト=夏のもの」という固定観念を捨てることも、ひとつ大事なことだと話していました。

トマトが年々夏に育たなくなり、初夏までに収穫が終わるようになってきているように、今はいろんな野菜の旬の時期が変わってきています。
そのことを私たちが理解して、今とれるものを、その時期にちゃんと消費しようとすることも大事なのだと。

そもそも鎌倉に暮らしていると、時期によりとれる野菜は本当にまちまちだと気づきます。この間なんて、市場にいくと唐辛子となすしか売ってなかった。それなら唐辛子となすで作れる料理を楽しめばいいし、それが一番自然で、おいしい。今日並んでいるものが、今日の旬野菜ととらえればいい。

そう思うと私自身がトマトケーキを夏に限って作ることも、もしかしたら違っているのかもしれないと考えさせられます。

なので、来年は春からトマトケーキを出すかもしれないし、冬にもトマトケーキを作ることがあるかもしれません。
そうやって野菜を見る目を変えることが、まずは第一歩なのかもしれないと。無力ながらそう思います。

そんな答えにならないことをぐるぐると考えつつ取材を終えたわけですが、
一番に伝えたいのはやはりおいしさ。ちゃんとおいしいマフィンやケーキに着地させることが大事です。

ポモナファームのトマトはなにしろ旨みが強く、塩が入っているのかと錯覚するほどの濃い味。
合わせて使ったトマトジュースも、ものすごい味なんです。トマトスープを飲んでいるようなコクと旨み。

いつもトマトケーキには少量のスパイスを入れますが、今回はそんな旨み=塩気をそのまま出したケーキにしたいと思い、スパイスを入れませんでした。なので今回は、塩とトマトとバジルの、シンプルなケーキ。

こんなにおいしいトマトが、気候変動に立ち向かう新しい農法で作られていることは、ひとつの希望だと思っていて。そのおいしさをトマトケーキにして届けることで、体感してもらえたら、それはdoyoubiとしてできることのひとつだと自負しています。

というわけで、今週末16と来週20日にポモナファームのトマトケーキを販売します。

大量に製造できるわけではないので届く数には限りがありますし、そもそも私がnoteやインスタグラムで発信する情報も限られた方にしか届かないのですが…

それでも読んでくださる方がいて、おいしさをシェアすることができたら。
今はそれを地道に続けていきたく、これからは農家さんのお話も少しずつ取り上げていきます。


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