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親友に対する巨大感情vs私



「やらない後悔よりやる後悔」とはよく言ったものだ。的を得てると思うし、私も常日頃、何かあるたびそう思う。

ある事柄を迷って何かをしない選択をして後悔するよりも、思い切ってやってみて後悔した方が「自分は行動に移した」という前向きな事実に繋がるし、やってみて正解だったらそれはもう万々歳だ。

しかし私は今、本当にそれを貫いていいのかずっと迷っている出来事が一つだけある。

「ずっと片想いしている親友に思いを伝えるべきか」という点についてだ。

○○○

「聞いた?A子婚約したんだってよ!!!」
「──ぇ」
「あっそうなの〜。婚約しました!あはは」

その声が聞こえたと共に私の世界は一瞬で動きを止めた。そしてショックで確実に声が出なかった。人は本当に驚いた時声も出ないというがまさにそれだった。ていうかショックって?は、それじゃなんだ。親友が結婚したというのに私は喜びより先にいずれネガティブな感情の驚きを抱いてしまったのか。

A子は学生時代に同じクラスで知り合ってすぐ意気投合した私の親友で、かれこれ5〜6年の付き合いだ。趣味も同じだったこともあってすぐ仲良くなったしいつも一緒に行動していた。A子はとても可愛い。かわいい、あ〜、本当にいい子。人懐っこい笑顔を見るだけで癒される。誰とでも分け隔てなく、いつも明るく振る舞っている姿を見ると勇気付けられるし、私と違って感情の浮き沈みが少なく、辛い時は相談に乗ってくれるとても優しい子だ。とても尊敬している。なんで私なんかとこんな仲良くしてくれるんだろうと何度思ったことか。好きエピソードを書き始めたら原稿用紙が何枚あっても足りなくなりそうだ。
社会人になった今も一番よく会ってるのがお互いだという。居心地が良すぎていざ遊ぶってなっても会ってすぐ眠くなっちゃう所だけは欠点。

「え!!おめでとう!!本当!?えー!!うわー!!おめでとう!!!!」

負の感情を押し殺して必死にお祝いの言葉を告げた。最悪。最悪。私の一番の親友が婚約。喜ばしいことなのに、心の底でショックと後悔の海が激しく波を立てているのを感じて、物凄く自分がダメな人間に思えた。
A子の口から最初に聞きたかった。その日、遊ぶ約束をしていてA子ともう1人の友達が先に合流していたのでその友達に先に伝えたのだろう。それを興奮鳴り止まない様子でもう1人の友達は私にいち早く伝えようとしてくれたのは分かる。でも私は人伝いで聞きたくなかった。A子の口から、直接聞きたかった。わがままだな。
その日はもう1日中心ここにあらずだった。3人で並んで見た映画の内容も、ちょうど主人公とヒロインが結婚する事になりそれを主人公の親友(主人公よりモテていた)に伝えたら彼は喜んではいたがとても残念がっていたシーンがありそれを見て、ひどく共感してしまったのを覚えている。

私はその日が来るまで、A子に好意を抱いてはいたがこれが恋愛的な感情なのかはずっと分からないままだった。けれど訪れたこの日の帰り道、何気なく聴いていた流行りの失恋ソングなんかに。普段ならあまり共感しないような歌詞に、めちゃくちゃ心を揺さぶられてしまってバスの中で自分も気付かぬうちに泣いていた。
そこで確信した。

あぁ、自分はA子と結婚したかったんだな。

パートナーとして、ずっとそばにいたかったんだ。

ほんと自分が生きていく中でこんな「帰りのバスで聴いた失恋ソングに涙を零す」なんてありふれたドラマみたいな事象が起こると思わなんだ。しかもそのバスに仕事帰りの姉も乗っていたんだからもう仰天だ。ネタが多い。(姉に泣いてる所は見られていない)

それからほどなくして、A子は結婚と同時にその彼氏と一緒に暮らしはじめた。

○○○○

なんでこんなに気落ちしてるかって、理由は3つある。1つは自分にもちょっとチャンスあるかな、なんて考えていたからだ。仲良すぎてしょっちゅう結婚しようよ〜なんて言い合っていた。既にその時A子には彼氏が居たが、A子もその彼と「結婚はいいかな〜まだ早いかな〜てか結婚するなら○○(私)が良い」とか喋ってる時もあったので私もそれに甘えていた。自分にはいずれチャンスが来る、A子とパートナーとしてそばにいれるかもしれないと。ただまぁ、そう言ってる人に限って婚約とか結婚の話がめちゃくちゃ早く進むのはよくある話なわけで。油断していた所にいきなり雷を落とされたようなものだ。

2つめはA子と思い描いていた夢を結婚に帳消しにされたと思ったからだ。私はある日A子から突然、「一緒にお店開こうよ!!」と言われた。私とA子はパティシエとかを目指す製菓系の専門学校で知り合ったからその時もお互いケーキ屋とパン屋で働いていて、なんとなく将来は自分の店を持ちたいな〜なんて考えていた。そんな時に大好きな人からこの話を持ち出されて興奮しない人がどこにいるだろうか!?2人で開業したらもう無敵じゃないかと思った。それぞれ得意分野の商品を作って、自分達お気に入りの内装や食器を用意して。夢は広がりに広がった。会うたびその話をして胸を弾ませた。だからA子から「結婚したら一緒にお店作れないかもしれない。だから…ごめん」と言われた時大層傷ついた。誘ったのはA子じゃん。勝手に期待させといて何言ってるの。私も子供だ。その人の人生はその人が決めるし、何が起こるか分からない。だから私も納得しないといけない。悲しいことに、それを言われた日を機にA子からも私からも、一緒に店を開く夢は口に出さなくなった。もちろん私がこんな事思ってるなんて彼女は知らない。でも伝えたら何か変わるかな。

3つめは、もし私が男だったら、と思うからだ。このA子に対する感情を抱くうち、私は自分の性別について深く考えるようになった。とりあえず私は今のところ、パンセクシュアルでXジェンダーだなと自覚している。(詳細は省きます) 今日の日本では同性婚は認められていない。最近になって同性パートナーシップ制度を設立する市も何個か出てきたが、やっぱりまだ法的に認められて結婚する事は出来ない状態だ。もし私が男だったらもっと素直にアピール出来たのかなとか考えてしまう。

でもやっぱり、彼氏から略奪してぇ!!とか色々考えても、それはやめといた方が…と言う自分もいる。だって彼氏いい人なんだもの。ちなみにその彼氏も同じ専門学校だったがクラスも学科も違かった。それでもその中でA子の事をずっと心に住ませていたらしい。A子に目を付けるなんて…いい目してるじゃねぇか…(?)
まぁその人の愚痴も何回か聞かされてはいるが、いつもA子の事を第一に考えてくれる優しい人なのだ。結婚するならこういう落ち着いた人がいいな、みたいな、凄く大事にしてくれてるんだと思える彼氏だ。

とか色々考えていくとやっぱり、せっかく新婚ホヤホヤなところにいきなり変化球をぶん投げてA子を、2人を、混乱させたくない。「結婚したいね」と言い合ってはいたものの彼女は間違いなく冗談で言っていたんだ。「実はずっとA子の事が恋愛的な感情で好きでした。冗談じゃなく、本当にパートナーとしてこれから先も一番そばにいて見守りたかったし、一緒に夢を叶えたかった」なんて言ったらどんな顔をされるか。どんな言葉で決別されるか。もう一生会えなくなるんじゃないか。それを思うと恐怖で足がすくみ、中々一歩が踏み出せない。
だからこの事柄ばっかりは、「やる後悔よりやらない後悔」かなと思うことにした。言って一生会えなくなるより、自分の本当の気持ちには蓋をして、今のこの1番の親友として居心地の良い関係を続けられればそれで良い。でももし私が自分の気持ちを打ち明けても、A子は優しいから突き放すような言い方はせず、「気付いてあげられなくてごめんね」と、悪いのはどう考えても私なのに自分が悪かったと伝えてくるんだと思う。本当のところはどうか誰も分からないけど、彼女がそう言う可能性もある事が自分でも分かってしまうから余計に胸が締め付けられる。謝ってほしいんじゃない。謝るのは私の方だ…。
私はこの感情を誰にも見えない自分の心の奥深くに仕舞い、ずっと忘れないまま死ぬまで生きていく。

ただ一つ言えることは、

私がこれまで出会ってきた人の中で、A子を一番愛している。

心の底から、彼女の幸せを祈っている。

A子にはもちろん、他の友達にも、ましてや家族にも、私はこの感情も、自分のセクシャリティについても誰1人他人に伝えていない。それはやはり、理解して貰えないかもしれないという恐怖心からだ。ただ以前からやっぱりどこか自分の気持ちを伝えたい思いはあって、今回この場を借りさせて頂きました。私と同じ気持ちを抱いている人が1人でもいたら嬉しいな。


p.s.
ただ、やっぱり何かのきっかけで私のこの気持ちを打ち明ける時が来たら、またこうして書き留めたいと思う。

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