初めてBarに行った話


その一、二週間は上手く行かないことばかりだった。

仕事は無限に遅延させてしまい、上長からのどこか憐れむような諦めの目線と失望由来の詰りの交互浴で今にも自律神経がトチ狂いそうだ。
週末も週末で苦し紛れに参加した異業種交流会ではネズミ講に捉まるし(そうと気付いてからはそれとなく遁走した為幸いにして怪我はなかったが)、資格取得の勉強でまた同じ練習問題に躓く。クソだ。
この日も一日の鬱憤を晴らすべく残業後にコンビニへ寄ろうとした。
そして、ふと、この近くにバーがあることを思い出した。
その店に対しては前々から興味はあり、Instagramや食べログで情報収集したり外観を不審者と思われない程度に目を凝らして観察してはいたが、おひとり様でバーに行くとなると最重度コミュ障限界社会人には少々ハードルが高く、今までは敬遠していた。だが、本当にこのままでよいのだろうか。
仕事もできず、スキルもうだつも上がらぬまま、交流会でネズミ講を搔い潜り、不得手と未知から逃げ続け、朝、絶望と共に目を覚ます。こんなくだらない生活のまま終わっていくのだろうか。

…ここらでぶち抜いておくか、コンフォートゾーン…

そうと決意すれば踵を返し、勇んでその店に向かう。だが、いざドアノブを掴まんとすると、ざぁっと嫌な想像がビジョンを伴って眼前に流れる。もし一見さんお断りだったらどうしよう…通の人しかいなくて入った瞬間排水溝から顔を覗かせたドブネズミを見る目で冷たく睨まれたらどうしよう…などと様々な被害妄想が一瞬にして脳裏を駆け巡り、不自然に看板の前に立ち止まってしまった。私は臆病なドブネズミだ。
「あっ、ふーん、バーなのねここ。知らんかったな、へー、メニュー…はいはい…」みたいなそぶりを装って。不審な腑抜けここに爆誕である。

しかし、ここで二の足を踏んでいたら何も得られない。私は変わりたい。否、変わるのだ!今ここで!

めっちゃくちゃ震える手でドアを開けた。

「一名様ですか?」
「あ、はっ…は、ハイ…」

消え入りそうな肯定を返し、通されたのはカウンター席だ。わぁ、カウンター席だぁ!


皆様、しつこいようで恐縮だが、バーのカウンター席だ。


ビビっちまったよね。
私、コミュ障だからよ…


最初にトマトサワーを注文した。
多分緊張でガチガチだったのでこの時私の不審者レベルは最高値を叩き出していたことだろう。
だが、向こうは流石プロだ。
引く素振りもなく、にこやかにオーダーを取ってくれた。折角ならカクテルの写真でも撮っておけば良かったな。

1人でキョロキョロオドオドしながら酒を嗜んでいると、バーテンダーのお姉さんが話しかけてくれた。気を遣わせてしまっただろうか。こんな挙動不審な人間が迷い込んじまって本当すいませんでしたマジで…

やはり他者と会話しながらだと酒が進むものなのだろうか。
折角バーに来たので飲んだことないカクテルを楽しんでみたい。2杯目は「チャイナブルー」なるものを注文した。

そうして出されたのは綺麗な水色のカクテルだった。あら綺麗~~~(やはり写真はない。以降気を付けます…)

ここで1時間程度週末の予定や仕事の話などして楽しく過ごさせていただいた。
ここで得た学びが一つ。

おひとり様でバーに来てる人は少ない。

でも、おひとり様で来たとて致命的に浮くことはないし、むしろゆっくりお酒を楽しみたいときに宅飲みの次の選択肢としてバーは全然「アリ」だ。
ご興味のある方は一度お試しあれ。


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