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アフタートークと成井豊さん

演劇エッセイ/5日目

終演後に公演関係者がトークイベントを行うことを「アフタートーク」と言うのですが、このアフタートークで忘れられない回があります。

演劇集団キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』2007/7/5〜8/5◎サンシャイン劇場、8/9〜16◎シアターBRAVA!

アフタートークは基本的にその日の来場客へ向けたイベントで、約15分〜30分程度のものが多いです。連日開催する公演も、数を絞って開催する公演もあり、観劇日を選ぶ際のひとつの基準となり得ます。小劇場では割とポピュラーなイベントで、ほとんどの場合は無料です。

2007年7月。演劇集団キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』を観に行き、その終演後にアフタートークが開催されました。キャラメルボックスがアフタートークをやることは滅多になく、僕の記憶が正しければ「劇団初の試み」とアナウンスされていたと思います。

登壇者は脚本・演出・劇団主宰の成井豊さんと出演俳優が1名、という組み合わせだったと思います。成井さんは開口一番「本日はご来場頂きありがとうございました」と来場者へお礼を述べ、「2時間観劇した後で皆さんお疲れでしょう? 残って頂きとても嬉しいです」と労ってくれました。その後成井さんは創作秘話を沢山話してして下さり、途中で「皆さん、本番中にコレがどうなっているか気になったでしょ!? 今日は特別にお見せしちゃいます」と、舞台セットの仕掛けをめくって見せてくれました。ある人物がベッドの中に身を隠し、追っ手がベッドをめくると、その姿は消えていた…というシーンのナゾを、成井さん自らタネあかししてくれたのです。

このアフタートークを、僕は印象深く覚えています。セットの仕掛けが見られて嬉しいという意味ではありません。成井さんの、観劇後に残ってくれた観客を想う気持ち、何とかして応えようとする実直さ、そういうものに、とても感銘を受けたのです。

アフタートークには様々な形式・内容があり、いま上演されたばかりの作品を、より理解し、より楽しむための手掛かりとなり得ます。各劇団ごと、各作品ごとの個性を反映させたアフタートークは、一種のファンサービスとして多くの方に愛される定番企画です。演劇ファンは「あの作品が好きだ」と同様に「あのアフタートークが好きだ」という思い出も、数多くあるのだろうなぁ……と思います。


※ダイジェスト映像がありましたが、これは2007年版ではなく2015年版になります。↑ ↑ ↑

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