親になっても夢を持っていいって子供達が教えてくれた。
私には子供が4人いる。
そのなかでも上から2人は小学生のお姉ちゃん達で、最近、この子達が私に自分達の夢を教えてくれた。長女は医者か研究者、次女はデザイナーになりたいらしい。彼女たちらしい夢だと思う。
「素敵!夢があることは良いことだね」
「ママの夢は?」
びっくりした。私は、「えっ?」と言ってかたまってしまった。
まさか、子供達に自分の夢を聞かれるとは思わなかったから。
私は、ライターになることが夢だ。
ずっとずっと、子供の頃から文字を書く仕事に就くことが憧れだった。
それにも関わらず、私は子供達に自分の夢を話すことが出来なかった。
「ママの夢は、みんなが元気に大きくなってくれることだよ」だのなんだの言って、いかにも"良いお母さん"に見られるようにしていたように思う。母親になったら自分の夢よりも子供のことだけを考えなくてはいけないのじゃないか、という固定観念と、罪悪感みたいなものもあった。
でも、"良いお母さん"とは?
夢を持つことに"良い"も"悪い"もあるのだろうか。
子供達がいることを理由に自分の夢を諦めた、なんて知ったら、そっちのほうが子供達にとって良くないことなのではないか?、子育てを言い訳にして、何もチャレンジしていないのに諦めてもいいの?、と数日間、考え込んだ。
そして、20代最後の歳になった今、やっぱり後悔はしたくなくて。ライターになりたい、という夢に向かって、今の自分に出来ることから始めている。
最近では、とある媒体でエッセイを掲載させてもらえることにもなった。とても嬉しくて、採用のお知らせが来たときはフワフワと浮かれ気分になってしまった。
そんなある日、また娘達から「ママの夢は?」と聞かれた。
私は意を決して、口を開いた。
「ママ、ライターになりたいの」
「へぇ!ライターってなに?」
「文章を書くお仕事、かな。簡単に言えば」
「すごっ!ママ、作文書くの得意だもんね!」
なんだか良い感じの反応をもらった私は、気分が良くなってくる。
「実はね、ママが書いた文章が採用されたんだ」
「すごーーーーーい!!」
2人の娘から拍手喝采である。なんの騒ぎかも分からないであろう3歳児にも、パチパチと拍手をもらった。私の腕の中におさまった末っ子はすやすやと眠っている。
なんだろう、この気持ち......言い表せないほどの喜び。
「......ねぇ、ママが夢のために頑張ってるってどう思う?」
「えっ?良いことじゃん。大人でも親でも、夢見ていいんだよ?」
当たり前じゃん、とでも言いたげな娘達が私をキョトン顔で見つめる。
私は、ありがとう、とだけ言って顔を背け、なんとか泣きそうになるのを堪えた。
私は恥ずかしかったんだろうな。自分の夢を言葉にして言うことが。
よくよく考えたら、自分の夢をしっかりと伝える機会などほとんど無かった。
子供の頃、母親に「作家になりたい」と言って反対されてから、これっぽっちも夢のことは語らなかったように思う。
そのときはすぐに諦めてしまったけれど、なれるかは分からないけれど出来るところまでは挑戦してみるよ、あのときの私。だから、ちゃんと見ててね。
母親である自分が夢を追いかけることの罪悪感と、夢を語ることへの恥ずかしさ。
それがずっと、私の胸の中にあったんだな。
でも、母親でも大人でも、夢は追いかけてもいいこと。
夢を語ることは恥ずかしいことじゃないこと。
そのことに気付かせてくれたのは、子供達でした。
子供達の夢も、そして私の夢も、どうか叶いますように。
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