きっと息子達が忘れてしまっても、私と星はこの夜を覚えている


「ママ、手をつなごう」

豆電球だけが付いているぼんやりとした暗い部屋で、私の手に小さな手が重なった。私によく似た丸々とした手が私の手を包んでくれる。この温もりを忘れたくないなぁ、と毎晩のように思う。声がする方を見ると、目が合った長男がニカッと笑った。

「ママ、だいすき」

「ありがとう。ママも、長男くんが大好きだよ」

ママの一番大切な宝物だよ、と私が言うと長男は「なんで?」と不思議そうに返してくる。そのまん丸とした目に映る世界が、長男にとって美しく優しいものであるようにと願いながら長男を抱き締めた。サラサラとした長男の髪の毛が触れて少しこそばゆい。

「長男くんも、お姉ちゃんたちも次男くんも、みーんなママの大切な子なんだよ」

「そうなんだ。ぼくも、ママが一番すき」

「ありがとう」

良い雰囲気やん、と思ったのも束の間。「でさ...」と続いて出てくる言葉は最近ハマっているポケモンの話。でもごめん、ママはポケモン第一世代なのでゼラオラとかダークライとか言われてもまったく分からないんだ。ただ、きみが夢中になるほどかっこいいポケモンだということは分かるけど。そういえば、次女が本屋さんで買った分厚いポケモン図鑑を持っていたなぁ...勉強するか。

「ママ」

「ん?」

「ちゅーき」

すき、ではなくて、ちゅーき、なところがまたぎゅっとくる。可愛いっていうもんじゃない。どれだけ疲れた日でも、悲しくなった日でも、たくさんぶつかり合った日でも。毎晩、私と長男はお布団のなかで鼻を擦り寄せながら「すき」と言い合うのだ。たとえ機嫌が悪いときや、その日が上手くいかない一日だったとしても、長男からの「すき」で「今日もちょっとは良い日だったかな」なんて思って心が軽くなったりする。喧嘩していても、私が「好きだよ」と言えばたちまち長男は笑顔になる。「すき」って、なんだか魔法みたいだ。でも、この魔法に甘えないようにしたい。無償の愛をくれるのは、いつだって子供達のほうだから。


左を見れば長男が、右を見れば次男がいる。
三人で眠るにはちょっぴり狭いお布団だけれど、でもまだ一緒に寝たいな。毎朝、身体がバキバキだけど。一人で寝たいって思う夜もそこそこあるけれど。でも、二人の寝息を聞きながら眠る夜が案外好きだったりするんだよなぁ、母ちゃんは。

「ぼくのマーマ」なんていう可愛い寝言が聞けたりするときもあるしね。


でもね、次男くん。きみはそろそろ夜通し寝てくれてもいいんだよ?








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