特別な日が、またひとつ
暗くて長い病院の廊下をスタスタと歩く私の足音だけが響いていた。
片手には小さな哺乳瓶のなかにほんの少しだけのミルクが入っている。
しんと静まる真夜中の午前二時。
部屋に戻ると、生まれたての小さな体で精一杯に泣く赤ん坊の泣き声が聞こえた。
私が抱っこすると、それはすぐに止む。
口元に哺乳瓶の先っぽを持っていくと、勢い良くミルクを飲み出すその姿がすごく頼もしかった。
ミルクをあげながら感じる赤ちゃんの温もり、息づかい、今にでも壊れてしまいそうな小さな体はまるで鶏がらのよう。
壊れないようにそっと抱き締めながら、「大好きだよ」と言ってみた。
みんな、君の誕生を心待ちにしていたんだよ。
小さな小さな体で、大きな勇気を持って生まれてきてくれた。
小さいけれど、私にとっては大きな存在であるこの子を抱っこしたとき。愛おしさが溢れた。
また、宝物が増えた。
この子から感じる温もり、息づかい、鼓動。
そのどれもが愛おしかった。
二人のお姉ちゃんとお兄ちゃんに囲まれて笑う君の笑顔を見ると、心が晴れるんだ。
私と少し離れただけで泣いてしまう君を見て、こうやって手を伸ばして私を求めてくれるのもいつまでだろう...と随分先のことを想像して切なくなってしまう。
隣でスヤスヤと眠る君の横顔は、思わず永遠を願ってしまうほどに可愛くて。
夜中に何回も起こされるときはちょっとだけイライラしちゃうことも。
心がぐちゃぐちゃにかき回される。
かき回されてかき回されて、でもやっぱり君がいてくれることが素直に嬉しい。愛おしい。
「生まれてきてくれてありがとう」って思うんだ。
この気持ちが愛情じゃないのなら、どんな名前を付ければいいんだろう。
最近では歩けるようになったね。
小さなその足で、どんな世界に飛び込んでいくんだろう。
公園で周りの景色をキラキラとした目で見つめて、手を伸ばしている君を見て成長を感じたよ。
その純粋な眼差しで、これからどんな景色を見ていくのかな。
もう少しだけ、一緒にその世界を覗き込ませてね。
1歳のお誕生日おめでとう。
これからも健やかに。
本当はもっともっと伝えたいことがあるけれど、それは胸の中に閉まっておくね。
君への気持ちは、どれだけの時間があっても伝え切れないからさ。
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