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119 - 感覚、感動

まるでペンが進まず
やっと書き出しても 何かの二番煎じ
きっと売れないだろう
(『サンセット大通り』)

119(*118はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): どっちも無理、ってなるから。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): うん。

C: 余計に今かかってる音楽いいなぁ、とか。

JC: これ良いでしょう。すごい古い録音で、ノイズが……めちゃくちゃ良い。

C: 録音良くなくていいよ、ってなるね。

JC: 本当そう。どっちかにしてください、うん。良い音でやりたいなら良い音で。

C: 無音室って入ったことある?

JC: あるよ。

C: ヤバいよね。飛ぶよね、入るだけで。

JC: 怖い怖い。本当に神経が研ぎ澄まされてる時は、普通の防音のスタジオですら、一番最初に行くのは絶対に嫌だもんね。

C: そうなんだ。

JC: 先に音出ししておいてもらわないと、もうキーがいっぺんに入ってきて……。無音ほど音あるんだって、どんだけ……キリがないから。

C: UFO見てる時みたいな?

JC: そうそうそう。ははは。お願いだから先に入って音出しておいてください。はははは。音も不思議だよね、鳴ってないってないから。

C: このザーザー鳴ってる音いいなぁ。音楽も映画もつるっと綺麗じゃなくて十分だなぁ。

JC: 全然いいよ。

C: 1950年代以前の映画にハマってた。

JC: 良いよね。フィルムの切り替えの「パサッ」だけでも良いもんね。あの一瞬だけでも面白い。だからってアナログ至上主義者でもないけど。

C: 全然ないよ。でも新しいんだもん。

JC: うん。

C: 遡れば遡るほど新しい。どんどん馬鹿になっていったんだな、って実感する。

JC: そうね。まあ向かってた。メディア、パソコン、携帯電話。まさに小人化だよね。ムーンショットになっていくわけです。

C: 街は街なだけでSF感が出てきた?

JC: アルファヴィルみたいなストイックな雰囲気じゃなくて、もっとグロテスクだけどね。

C: 楽しく歩こうと思ったら、アルファヴィルにいるみたいな気持ちで……は、ちょっと厳しいか。美的に無理か。

JC: 東京でも絶対に無理なサイバーシティーみたいなものって、結局あっちの世界にしか無いわけだから。まあ……無いわけですよ。どうなっていくんだろうね、みんな馴染んでいくのかな?

C: ヘルメットして?

JC: うん。アラレちゃんくらいで止まってくれたらいいけど。ははは。

C: この間そういう人いた。留学生なのかな。自転車こいでたぽっちゃりの白人のTシャツの背中に「サイバーパンク」って書いてあった。

JC: おぉん。サイバーパンクね。良い言葉だもんね。

C: それは良い方。良くない人もいた。電動シニアカートで歩きスマホしてる人。全然前見ない!

JC: あれ乗ってる人でロクな人いないからね……。もう飛ばしてあげたらいいのに。

C: 空に?

JC: 空を、うん。

C: 自動運転にしないといけないね。ツバメに文句言い出すぞ。

JC: そしたらいい加減ツバメも喋り出すよ。「のけ!」って。ははは。

C: そう、鳥がね、多いんだけど。

JC: うん。

C: 散歩してたら全部つがいで。

JC: うん。

C: 全部二羽ずつ飛んで……。

JC: 繁殖期かな。鳥はつがいが多いよね。

C: シンクロ具合がすごくて。「あぁ素敵だなぁ、でもホログラムなんだろうなぁ……」って。

JC: ははは。ホログラムはこっちだけどね。

C: たまに充電してたりするよ? 一番電圧の高そうな所で。

JC: それ充電だから、エネルギーだから。

C: メカなのかなぁ、って。

JC: メカですからね。

C: エネルギーからフリーエネルギーを摂ってる?

JC: 逆。

C: 彼らにとってのフリー。

JC: そうそう、人類ありきの。

C: ラドン温泉みたいな? 細胞が活性化してる?

JC: はははは。鳥……今は人間の方は豊かさが欠けてるよね。

C: ちょっとの木陰があれば涼んでる。

JC: 鳥、賢いんですよ。

C: 見事なもんだなぁ。

JC: 遊んでるもんね。「鳥は一生懸命生きてます」とか、NHKで言うかもしれないけど、一生懸命生きてるように思わせる、人間もそうあるべき、みたいな。彼らにとったらゲームだよ。お腹いっぱいでそれ以上なんて絶対食べないし、都合の良い時間にしか食べに行かないし。

C: よほど賢い。

JC: そう考えると全部そうじゃん。野菜だって都合の良い時にしか育たないし、都合の良い水分じゃなければもうしんどいからって腐るし。

C: 強さとは何かね、というのがいかに人間は歪められているか。

JC: うん。

C: それって強さと言われないけど、本来はそっちだよ。気合と根性じゃないって。

JC: 人間の強さね……。木とか、森とかは必ずシンクロしてるって言うじゃん。危険な菌とかが入って来たら情報共有して、早く食い止めるように出来てる。でも日々はお互い場所の取り合いで忙しいわけでしょう。それが種の保存だよね。その、自然に働いている「感覚」……感覚に話戻ってきた。

C: うん。

JC: 自然に働いているその感覚というのが唯一の手段なんだけど、それをとことん奪われていくのが人間の歴史になっていて。だから「進化だよね」とか言って誤魔化されてる。

C: うん。

JC: 実は奪われているわけだよ。実生活の中でそこのバランスが取れてる人というのが理想だよね。極端に便利さに走るんじゃなくて、極端にナチュラルに戻っていくんじゃなくて。その為には、今がどういう時代か、というのを知っておく必要がある。

C: うん。

JC: で、自分は何がしたいのか、どういう事を感じたいのか、そういうごくごく基本的な事だけど。これはね、今大事。極端な思想や考えに走らないこと。いかにね……そうなるとやっぱり感動になるんだけどね。心が動きそうなモノを探す……めちゃくちゃ重要な事かなぁ。

C: 探すんだ。

JC: うん、探した方がいいと思う。探す……探して出来るなら苦労しないか。ははは!

C: それでもやってみる。

JC: うんうん。思ってもいないような事ってあるからね。永劫回帰にしても、まるですごく深い思想かのように思うけど、ニーチェはちゃんとそういうのは「ふいにやって来る」からって、思ってもいない時にやって来る、って。だから探して見つかる時もあるし、まったく探してない時に出会う事もあるし。ただその感動は必ず永劫回帰するから心配しなくていいよ、という事だよね。

C: ふう。

JC: やって自分が上手くなるという感動もあれば、何かを見て家族でそういう時間が来たというインパクトもあるだろうし。エネルギーに感動する、見てる人や取り巻く環境に感動する……巻き込むエネルギーだよね。スポーツ、ライブとかには、そういうある種の残酷性がある。ピカソのギャラリーに人が並ぶ、それは作品云々ではない。

C: うん。

JC: その光景を見ている。そのコントロールされている人々への感動だよね。

C: 感動に溢れてる。

JC: はははは。全然優しくないでしょう。その人達の「感動」は良くない方向に向かってるな、とずっと思ってたし、それがスポーツとか音楽とかであって欲しくなかったんだけどね。ずっとね。そうであってはならない。それは今も変わってない。そこに政治・経済が入ってきて、医療が入ってきて、「入って来るぞ、入って来るぞ、もう来るよ!」という時代だったね。あいつらが来るよ、って。

C: それを見ている。

JC: うん……。例えば、鳥の話じゃないけど、渡り鳥が「そこ通んなくても」みたいな所を通って行くでしょう、ルート上だから。ヒマラヤとか通る。

C: うん。

JC: 下手したら全員死んじゃうよ、上手くいけば全員生き残るけど。今そういう時なんじゃないかな、と思う時がある。一人の責任ではないし、何グループも飛ぶわけだから。ちょっとでも良い風を見つけたチームは山を登って次の土地に行けるだろうし。そういう風なサイズで考えた方が……。あんまり全体を見ると……もちろん全体を考えるんだけど、でも出来ることといったらそれくらいかな。

C: 良い例え話でした。

JC: うん。

(つづく)


2023年6月28日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)
#doubles_studio_talkでトーク部分を一覧表示できます。

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