Everything But The Girl 「Each and Every One」
「Everything But The Girl」
トレイシー・ソーンとベン・ワットの二人組のユニットで、ポストパンクの代表的なバンドでありネオアコースティックの原点とも言われている「Everything But The Girl」。
2人は元々チェリーレッドという同じインディーズレーベルに所属し、別々に音楽活動をしていましたが、1982年レーベル企画によってユニットを結成することになります。
デビューシングルは、ビリー・ホリデイの「Night And Day」のカバーをA面に、それぞれのオリジナル曲をB面に収録しリリース。
このシングルがインディチャートで予想を超えるヒットとなり、本格的にユニットとしての活動を始めることになります。
そんなEverything But The Girlの魅力にいち早く気づいた人物の1人が、JAM解散直後のポール・ウェラーでした。それは、ポール・ウェラー本人が二人の通う大学へ直接押しかけ、自身の立ち上げたレコード会社にスカウトするほどの入れ込み様。まだ名もない頃に、人気も実力もあるアーティストにそこまで口説かれたら揺れてしまいそうですが、二人はその誘いを断ります。
*その後ポール・ウェラーが結成したStyle councilのファーストアルバム『Café Blue』に1曲ゲスト参加。
今回ご紹介するのは彼らのデビューアルバム『Eden』のオープニングを飾る「Each and Every One」です。
雰囲気はボサノバっぽい感じですが、ジャズの要素も含みつつ、トランペットの音色がお洒落に響きます。そして、なんといってもトレイシーの神がかったアルトヴォイスがたまりません。内面に深く響くような色気のある歌声は、一度聴くと彼女の世界に引き込まれるような感覚になります。
詞の内容はラブレターを渡された女性が「考え直したほうがいいんじゃない?」と相手の男性に対して強気に言い返すころから始まり、「なぜならあなたの愛はすぐ消える愛だから」と言い放つ内容。そして決めゼリフ「優しさなんて私を思い通りにしたいがための手段でしょ」と締めくくっています。
歌詞は「男なんてどいつもこいつも一緒、私は1人でも生きていける」というイギリス人っぽい現実的な視線で書かれたものですが、それと相反するように、メロディーからはそれでも愛を信じたいという気持ちが伝わる。そんな一曲なのです。
二人は、Everything But The Girlとして活動した18年の間に数多くのヒット曲を世に送りこみ、多くの支持を得ます。そして2000年にバンドを解散。
が、トレイシーとベンはプライベートでもパートナーになっており、(子供を3人儲けた後、2009年に入籍)バンドという形式は解散したものの、お互いの作品作りには今もなお影響を与えているようです。
デビュー当時のトレイシーのトレードマークでもあるサイドが短く切り込まれたアバンギャルドなショートヘア。このヘアスタイルは、いま見てもお洒落です。合わせるファッションはワンピースや花柄のトップス、ライダースを合わせた「甘辛」なものが多く、80年代独特の雰囲気を感じます。
現在のヘアスタイルもアシンメトリーのショート。時代に流されずに自分らしさを通す強さは、ヘアスタイルからも伺うことが出来ます。
そんな彼女だからこそ、私たちの心をいつでも惹きつけるのでしょう。
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