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【映画の力とは】 NITRAM 二トラム

僕は、僕以外になりたかった

ポスターのこのフレーズにあらゆる感情が溢れている。

忘却によって生き延びることはできますが、記憶からこそ自由が生まれます。

1996年、タスマニア島で起きた無差別銃乱射事件が何故、どのような経緯で起きたのかを取り扱う作品。

まるで、生皮を剥ぐように、少しずつ、少しずつ、淡々と犯人と彼を取り巻く人々や社会の様相が描かれていく。

パパよりもサイアクな人生なのに、僕はまだ生きている。

今まで、どれだけの劣等感に苛まれてきただろう。どれだけの我慢を重ねてきたのだろう。

もう少し何かが違っていたら、こんな展開にはならなかったのではないのか。

最後の20分、手の震えが止まらなかった。初めはなだらかだった下り坂が、もう戻れないような急勾配になってしまっていたから。もう、転がり落ちるしかないことを肌で感じられてしまったから。

家の中の光景の陰影や、カメラの切り取り方、ボソボソと話す言葉の繋がり。

脚本もカメラももちろん俳優さんたちも、本当に凄い。最後に出てきたメッセージの強烈さにも打ちのめされる。こういう時、映画はとてもパワフルだと心から思う。

だけれど、全員に見て!なんてことが言えない。精神的に元気な時に、こういう題材に関心がある人だけ、見たらいいと思う。絶対に損はしない。

見られて良かった。




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