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モダン演出?経費削減? ローマオペラ座 「イドメネオ」

帰国しました。日本あったかくてビックリです。ありがたやありがたや。ロンドンは最高気温が9度前後だったのです。ダウン必須。

さて、駆け足続きのローマだったのですが、1晩フリーな夜がありました。そして宿の場所は、ローマオペラ座から徒歩3分! 恐る恐る調べて見たら、なんとその日は公演が!ひゃー!無い日も沢山あるんだよ!

これは神様の思し召しに違いない!!開演10分前にチケットカウンターに飛び込み、がーっと買ってさーーっと席に走ったら、オケピへのカーテン開けるというハプニングを1秒ばかりやり散らかし(セキュリティの人とかいた方がいいんじゃない?!?!(自分のことを棚にあげるの術))、目を白黒させつつも、なんとか席につきました。

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綺麗やなー。

あらすじ:

舞台は、トロイア戦争後のクレタ島。勝利したクレタの王子イダマンテは、捕われのトロイの王女イーリアと恋に落ちる。彼女への思いから、捕虜となったトロイの人々を解放し、両国の平和的共存を図る。そこに、海戦で死んだと思われていたクレタ王のイドメネオが命からがら、島に凱旋する。荒波で沈みかけていた船上で、イドメネオは、祖国に返してくれれば、初めに出会った人間の命を自分の代わりに捧げることを海神ネプチューンに誓約したのだ。願いは聞き届けられるが、海岸でまず初めに出会ったのは、息子のイダマンテだった。
息子の命を助けようと、イドメネオはイダマンテを国外追放の刑に処し、他の生贄を立てようとする。又、王は、イダマンテに片思い中のエレクトラを連れていくように命じる。イダマンテとの旅を喜ぶエレクトラ。愛するイーリアと離れ離れになると悲嘆にくれるイダマンテ。
出航直前、海の怪物が現れる。民衆は生贄を求めるネプチューンの使いだと慄く。怪物退治に出航する直前、死を覚悟したイダマンテはイーリアとの愛を確かめ合う。嫉妬と憤怒の炎に焼かれ、エレクトラは絶命する。一方、ネプチューンの怒りによって荒廃してゆく祖国を目の当たりにしたイダマンテは、生贄となる運命を受け入れ、イドメネオの刃を無抵抗のまま受け止めようとする。そこにイーリアが介入し、自分を身代わりに、と申し出る。そこに突如、ネプチューンのご神託が下される。「イドメネオは王位を退き、イダマンテはイーリアを伴侶にして王となれ」と。

ざっくりとした粗筋はこんな感じ。王道な感じに思えるでしょう?でも、今回の演出、よく言えば現代的、悪く言えば予算削減案であることが際立つ公演でした。

幕が開けると、そこにあるのは金網フェンスにしがみつく難民のような群衆。着の身着のままで捕虜となったトロイの民衆の中、姫感ゼロなイーリアが歌う。そこに登場するクレタの軍隊と、それを率いるイダマンテ。皆、現代的な軍服姿。金網のあちらとこちらで見つめ合う両国の王子と王女。金網を撤去し、トロイの民衆を解放せよ、とイダマンテが命ずると、金網がガッシャンガッシャンと撤去されていく。

…ぴっかぴかで華やかなセットの中、フリフリドレスで、王冠キラキラなお人形さんたちが優雅に歌い踊るというわたしのオペラに対する偏見は

金網と共にガッシャンガッシャンと崩壊していきました。

もうここからは突っ込みどころ満載です。

片思いしているイダマンテに同行できるとご機嫌ルンルンのエレクトラちゃん(軍人。なんとなく鬼軍曹的な雰囲気)は、毛布一枚で軍人キャンプのテントから出てきて、一緒に行けて嬉しいのテーマを歌います途中で生着替えあり。最後はニーハイブーツをシャーーッと上げて、完成です。恋の戦闘態勢整いました、的な。

出航前に愛を確かめ合うイダマンテとイーリアは、海岸を埋め尽くすオレンジ色のライフジャケットを踏みしめながら、右往左往を繰り返します。心配になったよね、コケないかなって。ライフジャケット、微妙にフニフニじゃないですか。あれを乗り越えながらオペラ歌唱って、大変じゃないのかな。恋が実るか以上に、ああ、どうか足首グニってならないでね、って手揉みした。

そして、きわめつけ。国外追放されるイダマンテに用意されたのは、

ゴムボート!!!!!!

ひゃーーーーーーっはっっはっは。なんだこれ。あ、一応ミニエンジン付きのやつね。オールとかは付いてなかった。多分。いや、それにしたってゴムボート!オペラの舞台上に、ゴムボート!!!!お城の大広間とか、豪華な酒場とか、天蓋付きのベッドとか、どこいった

大きな公演の合間の小規模公演なのかも知れませんが、予算削減措置であることは、おそらく間違いない… と思い、調べてみたら、ローマオペラ座、2014年にものすごい財務危機を理由に、スタッフの4割にあたるオーケストラと合唱団を全員解雇しようとしたらしい。政府の助成金の減少が理由だそうな。結局労組の激しいスト活動が続いた結果、解雇はなくなったけれど、皆さん、年間給与は10%弱カットということで、労組側との合意に達したらしい。

NHKとかの一次ソースは5年前だからか削除されているものが多かった。ブログの参照先もNot foundが多かった中、一番報道記事っぽいものが四国新聞だったw わはは。

この段階で、オペラ座の借金額は3000万ユーロ(40億円以上)。そうそう減らせはしないだろうから、今でもかなり残っているのでしょう。

難民問題と絡めての演出、と思えなくもないけれど、た、多分… どちらかといえば、予算の理由が大きい… 気がする… んですよねえ… うがった大人でごめんなさい。

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ゴムボート金網デスマッチを予想だにさせないポスターw

途中ところどころ気絶したけれど(エレクトラの背景が分からない… なんで彼女はクレタ島にいるんだろう… )、大体大事な場面は見てるはず。演者の声の気合度合いで、不思議とパッチリ目が覚めるのです。だからか、コーラスだけの部分は、ふわっと意識が飛びました。あ、理由の1つは、軍隊っぽく見えないってのもあったけど。行進の足並みが揃っていないと萎えるのです、元マーチングバンド出身者としては。

それでも音楽はモーツァルトだし、劇場は美しいしで、満足な観劇となりました。

でもやっぱり、次回はキラキラ希望!笑


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