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30/365 【ゾワッ】 「匂い」による格差:映画「パラサイト」

2020年、感情noteを始めます。

心が震えたお芝居や映画や本、訪れた場所といったコト録も続けますが、それらは言わばハレの日。その合間にある「普通」の毎日を、も少し書いてみたいのです。でも、何でも良いってなると、ちょっぴりハードルが高いんです。

感情は毎日動くもの。喜怒哀楽のようにパッキリしたものもあるけれど、その隙間にある色とりどりのあわいも見つめてみる。良くも悪くも、なんかもやっとしたやつ。1日を振り返って、感情がなーんも沸かなかった、なんて日もあるかも知れません。それはそれで興味深い。

写真と140字だけの日もOK。ちゃんと整理できていなくてもOK。毎日書いていたら、何かが変わるかも知れないし、何も変わらないかも知れません。なーんも定かではありません。

でも、やってみたいをやってみる。できることなら、365日。意地っ張りな自分を見据えた上での、やってみようを始めます。

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父さん、今日僕は計画を立てたよ

計画なんて立てるから、失敗した時に凹む。始めから無計画なら、失敗しても凹まずにすむ。何でもないふりができる。見て見ぬを決め込むことも。

格差社会の底辺にいる一家の「計画」の物語。

冒頭30秒くらいで出てくる、くるりくるりと登場するハングル文字のタイトルフォントからしてハッとする。デフォルメされた「パラサイト」の文字。漫画「黒執事」のフォントのようだ。ああ、あれもまた、悪魔と取引した話だっけ。

状況説明も人物紹介も最小限に抑え、上記のタイトル表示後数分で、いきなりプロットが動き出す。まるで黒澤明の映画のようだ。しかもそのスピードが衰えない。

路地裏の、半地下の、衛生状態最悪な狭い家に住む4人家族。仲は良い。これを冒頭数分でさらっとやって、そこからは映画紹介サイトでも記載のある「金持ち家族に対する寄生計画」が始まっていく。

ただし、この紹介文から想像する展開は、映画が6割進んだあたりで大体終わる。そこからは怒涛の想定外の展開に次ぐ展開だ。

いやいや、そこに隠れたら階段上がる時に絶対見えてるじゃーん!とか、ああああ、もうなんでそこで転ぶかなあ、とか、韓国映画にちょいちょい出てくるご王道ギャグで緩急つけつつ、最後の最後の「無計画」に絶句した。

自分の生い立ちに染み付いた「匂い」って、なかなか拭いされないものなのかな。気づいてしまってもどうにもできない「匂い」。それをなんとか気にしないフリをして生きている人の目の前で、格差社会に君臨する側の人間が、無邪気にくっさ!と鼻つまんだら、そりゃ一瞬、理性のたがも吹っ飛ぶか。

「ジョーカー」では暴力で表現されていた格差が、この作品では「匂い」で表現されているのが、とてもリアルだった。同じ時期に「格差」を打ち出す作品が続くことにも胃がキュッとなる。汚水の匂いが濃く立ち込める気がして、思わず自分の匂いを一嗅ぎしてから映画館を出た。

あれだけ頭の回転の早い息子や、肝っ玉ががっつり座ったお母ちゃんだもの、きっときっと、半地下で最後に夢見た未来は、叶う... よね。

そんな希望に逃げることすら、甘ちゃんだなあとポン・ジュノ監督に一蹴されてしまう気もする。

期せずして、2日連続で韓国映画に触れることになったが、どちらも冷酷なまでに冷静に人間の本性を突きつける作品だった。

辛い。怖い。目を背けたい。でも、頭の中にへばりつく汚水の匂いが、それを許してくれない。

どう生きることがいいのだろう。

言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。