【呼ばれるとは】 ハイデラバードに来てみたら
三島由紀夫の言葉だそうだ。どこで読んだのかは忘れてしまったけれど、妙に納得したのは覚えている。だから、自ら行こうとは思わなかった。
今回、全く想定外のご依頼で、急遽インドへ行くことになった。コロナ後初の出張だ。しかも、デリーやムンバイ、バンガロールではなく、ハイデラバード。
絶対にお腹を壊すから、と経験者からは散々アドバイスを頂いた。初めてのお使い同様、色々考えすぎると一番大切なものを忘れてしまう性質の為、右手にパスポートを、左手には正露丸を握り締めて羽田を出発した。これさえあれば、きっとどうにかなる。
久しぶりの羽田は激混みで、出国ゲートからカウンターを超えて反対側まで行列ができていた。アジアか。(アジアです)
デリーでの乗り継ぎ後、夜中に到着したハイデラバードの第一印象は、「中庸の無さ」だった。全てがパッキリしている。堂々としている。遠慮がない。人も、建物も、自然も。
超高層ビルの隣に未開の森林が広がり、その更に向こうには建築途中の高速道路が伸びている。隣との境目がない。突然別の空間が現れる。そしてそれに何の違和感もない。砂漠のど真ん中にいきなりラスベガスが現れるように。
少し時間があったので、市内散策。
ゴールコンダ要塞。1518年建設。その後、1687年にムガール帝国の侵攻によりゴールコンダ王国は滅亡する。インドの「万里の長城」の異名もあるらしい。確かに広大だった。
広大な遺跡の向こうに延々と市街地が広がっている。タイの交通網のような鉄道が走り、モスクとお寺と植民地時代の名残のような西洋風建築物が混在している。
街を歩く人たちも色とりどりの様々な様式のお衣装を纏い、4車線の道路を堂々と横切っていた。根性を鍛えたかったらインドに滞在するに限る。
日本人が珍しいらしく、どこへ行っても写真を一緒に撮ろうと誘われた。レアなポケモンかツチノコの如く、珍奇な生き物扱いかと思ったら、外国人は須く"exciting"だから、と運転手さんが教えてくれた。確かにこの平たい顔は、一目で外国人だと判別できる。
初めはスリかと思って断っていたが、その内、この人たちは本当に写真が撮りたいだけなのだと気づいた。それからは、フレンドリーそうな人たちには応じるようにした。最後には人だかりが出来ていた。
「Thank youってどういうの?」とその人々に尋ねたら、3種類くらいの答えが返ってきた。宿へ帰って調べたら、テルグ語(ダンニャバダーン?チャーラサンクサンディ?)、ウルドゥー語(シュクリヤ)、ヒンディー語(ダンニャワード)(?)らしい。日本の方言どころの騒ぎではないくらい違う。
お顔立ちで出身地を判断するのは難しい為、言語をフックにするしかないが、悲しいかな、中間音が多い為、滞在中に習熟できそうにない。言語オタク的無念。
総じてお仕事でお会いした方々は、優しく穏やかで紳士的だった。どうしよう、インド好きになるかも知れない。
そして…
今の所左手に握りしめた正露丸は出番がない。歯磨きは念の為、ボトルウォーターを使っているけれど、洗顔等は水道水。
帰国するまでが遠足なので、このまま気を緩めずに走り抜けられますように!
明日も良い日に。
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