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309/366 【号泣】 タクフェス第8弾 「くちづけ」

まこちゃんはね、もういないの。

知的障がい者のグループホーム「ひまわり荘」に、仲良したちが集まってくる。クリスマスらしい。そしてこの日は「まこちゃん」の誕生日、らしい。障害者の1人、「うーやん」は、どうやら今日、まこちゃんと結婚するつもり、らしい。

でも、何かがおかしい。

せっかく運んできたクリスマスツリーをコンセントに繋いでも、点くはずの電気が点かない。よく見ると、ソファはカバーで覆われている。

そのうちに、彼らの家族や周りの大人たちが登場し、まこちゃんとは結婚できないことを告げる。だって、まこちゃんはもういないから。

なんで?

それが、紐解かれていく。

***

ちゃんとしなきゃなんて言うなよ

知的障がい者の一人一人が愛おしい。動きや行動の癖で、心情がありありと分かる。繰り返し同じフレーズを言うことで、安心しようとしている。大丈夫って自分に言い聞かせて、落ち着こうとしている。

恥ずかしい時は、キャッて言うし、怒っている時は素直にぎゃーって叫ぶ。

そして、誰よりも優しい。相手を思いやる気持ちは誰よりも深い。裏切りや損得という概念が無いから、全てが純真。

オブラートに包むことに慣れている「健常者」に、その言葉は時折ぐさりと刺さる。

でも、彼らこそ、世界をそのままに見ている。

美味しいものは美味しい。

好きなものは好き。

意地悪な人は意地悪。

そして何よりも大好きな人は、他では替えがきかない。だって、その人は1人しかいないんだもの。パパであれ、兄妹であれ。

収監者の4人に1人は知的障害者

1人で生きていけない子たちを、どう支援できるのか。だから、ちゃんと生きていけるようにしなきゃいけないとお巡りさんは言う。

でも、ちゃんとって何健常者がちゃんと生きてるなんて、本当?私は本当に全うなの?そんな叫びがこだまする。

グループホームが建つと、地価が下がるってさ

自分の中のグルグルを制御できなくなった時、彼らはびっくりするような行動を取る。知らない人のおうちのカレーを食べちゃったりもする。でもそれには絶対に絶対に理由がある。

自分の常識外だからって、それら全てにバッテンしてたら、この世はきっとオーソン・ウェルズみたいな世界になる。

それでも現実に、偽善的な言葉では解消されない課題がある。

例えば自分に知的障害を抱える娘がいたとして。自分は余命3ヶ月ですと突然宣告されたとして。娘を育てるために日々の生活で精一杯だった為に貯金もそれ以外の残せる財産もなくて。頼ろうと思っていたグループホームも無くなってしまい、最後の最後に頼ろうと思っていた他人(編集者)が夢を叶えるために地元を離れるなんて言われてしまったら。

そんな中で娘に「パパがいなくなったら、私、生きていけなーい」って無邪気に言われちゃったら。「いーっつもパパがいてくれたの。楽しかったの。いなくなったら、つまんないなー」なんて言われてしまったら。

娘を手にかけてしまったことを非難することは簡単だ。誰だって言える。それだけはしてはならなかったことだった、なんてワイドショーでだってみんな口々に唱える。でもね、でもね。実際はどう?

しんどい。

しんどいけど、しんどいだけで終わらせない。

いっぱいいっぱい泣いて笑って泣き笑っての2時間半。

満を辞しての再々演。宅間さんの「うーやん」は年齢的にこれが最後かもしれないとのこと。まじか。いや、そりゃそうだ。そりゃそうなんだけど。そうなんだけど!

2度目なのに、号泣。書いていても泣ける。

もしもこれを読んで見に行こうかな、と思った方!タオル必須!








自閉症の子のベビーシッターを1年半、務めていたことがありました。その子のことを、思い出しました。どうかその子が幸せに生きていますように。

何かある度に、私には泣くしか術がなかった。今はもう少し大人になりました。だから尚更、思うのです。見て見ぬ振りをしないように。

明日も良い日に。








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