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映画「007」シリーズ全タイトルシークエンス解説 【前篇】

「フーアーユー?」
「デッド」、、、「デザイン・オブ・ザ・デッド」(ボンドの声で)

こんにちは。Twitterでタイトルシークエンスや名作デザインなどを紹介している【デザイン・オブ・ザ・デッド】です。
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1962年の第1作公開から60年近く親しまれている映画007シリーズ。
2020年4月10日公開の最新作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』が楽しみですね。今回はタイトルシークエンス(オープニングクレジット)にフォーカスして全作品を紹介していきます。
※新型コロナウイルスの感染拡大により2020年11月20日公開になりました。

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タイトルデザイナー

Maurice Binder(モーリス・ビンダー)

007シリーズ14作品でタイトルシークエンスを担当している、ミスター・タイトルデザイナー。記念すべき映画第1作Dr.Noをベストタイトルシークエンスにあげる人も少なくありません。銃砲身の中から覗いた007の有名なシークエンスやシルエット女性がダンスしたり、トランポリンで高くジャンプするイメージを生み出しました。同世代のソール・バスと並ぶ人気デザイナー。

007以外の作品(抜粋):
太陽がいっぱい(1960)/ シャレード(1963)/ バーバレラ(1968)/ ラストエンペラー(1988)/ シェルタリング・スカイ(1990)など

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Robert Brownjohn(ロバート・ブラウンジョン)

ローリング・ストーンズ「Let It Bleed」のケーキのジャケットなどを手がけたグラフィックデザイナー。モデルの体に投影し撮影するバウハウスに影響を受けた手法で、007らしいセクシーなスタイルを作り出しました。007を含めて4本の劇場映画のタイトルシークエンスを手がけています。彼は44歳の時、薬物依存もあったためか心臓発作によってなくなっています。

作品
ロシアから愛をこめて(1963)/ ゴールドフィンガー(1964)/ スパイがいるところ(1965)/ 将軍の夜(1967)

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Daniel Kleinman(ダニエル・クレインマン)

マドンナ、フリートウッド・マック、ポーラ・アブドゥルなど数々のMVを作ってきたディレクターであり、また多くの企業テレビコマーシャルも手がけてきた監督です。007ではゴールデンアイ(1995)からスペクター(2015)まで(「慰めの報酬(2008)」を除く)は彼の作品です。モーリス・ビンダーの作品に敬意を表しつつ、より複雑でモダンな作品に仕上げています。

作品
Greatest Chocolate Adverts of All Time (2019)/ Mercedes-Benz: King of the City Jungle (2017)/ Fist of Bean(2014)など

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ここから作品ごとにみていきます。タイトルの★は私のオススメです。下部にあるその年の公開映画は、日本での公開日をベースにしています。


007 ドクター・ノオ (1962)   ★

Dr. No
👤Maurice Binder

銃口が右下へ移動し、ドット模様に変わり、Dr.NOのタイトル。文字数の少ないタイトルにも関わらず2行にして表示しているのに注目。
途中から音楽の調子が変わり、カラフルなダンスのシルエットに。さらに杖をついた3人のおじいさんに変わる一度に三度美味しいタイトルシークエンス。

1962年 公開映画
ロリータ / 椿三十郎 / 秋刀魚の味 / ロープ / 史上最大の作戦 / パニック・イン・ロンドン人類SOS / 恐怖の岬 / ハスラー / キングコング対ゴジラ 


007 ロシアより愛を込めて(1963) 

FROM RUSSIA WITH LOVE
👤Robert Brownjohn

モデルに直接クレジットを投影したものを撮影している。モデルが動くとそれに合わせてクレジットも動くため、モデルの動き方がアニメーションの代わりと言ってもいい。体のどこの部分を動かしているのかを想像して前のめりになり、そのままクレジットも見てしまうというとんでもないタイトルシークエンス。フォントはNews Gothic

1963年 公開映画
大脱走 / アラビアのロレンス / シャレード / 天国と地獄 / マタンゴ / 鳥 / アラバマ物語 / 悪徳の栄 / 何がジェーンに起こったか? / 女と男のいる舗道 / おかしなおかしなおかしな世界


007 ゴールドフィンガー(1964) ★

Goldfinger
👤Robert Brownjohn

「ロシアより愛を込めて」を発展させ、モデルに映像を投影したものを撮影。まさにモデルがスクリーンとなるため不思議な映像に仕上がっている。女性の顔の上に男性の顔を投影したり、投影したモデルをゆっくり移動しながら撮影したり魅せる工夫が多い。クレジットは余白の空間に表示される。控えめに言っても最高フォントはNews Gothic。

1964年 公開作品
マイ・フェア・レディ / 博士の異常な愛情 / シュプールの雨傘 / ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / 危険がいっぱい / モスラ対ゴジラ / 山猫 / 砂の女 / アルゴ探検隊の大冒険


007 サンダーボール作戦(1965) ★

Thunderball
👤Maurice Binder

女性の姿は完全にシルエットになり、クレジットは水中っぽさを表現したアニメーションに。人物をシルエットにしたことで様々なポーズや複数人出すことが容易になり、単調になりがちな画面に動きをつけることに成功している。背景の色も次々かわり華やかに。 フォントはFranklin Gothic

1965年 公開作品
サウンド・オブ・ミュージック / メリー・ポピンズ / 荒野の用心棒 / 8/21 / 夕陽のガンマン / 赤ひげ / コレクター / 反撥 / フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)/ アルファヴィル


007は二度死ぬ(1967)

You Only Live Twice
👤Maurice Binder

日本が舞台なためか、文金高島田カツラで裸の女性シルエットが使用されている。前作に比べればシルエットパートはかなり少なくなっている。火山の噴火口映像のオーバーラップによるコラージュを多用

1967年 公開作品
気狂いピエロ / 欲望 / 暴力脱獄 / 戦艦ポチョムキン / 007/カジノロワイヤル / 殺しの烙印 / 華氏451 / 恐竜100万年 / 忍者武芸帳 / グランプリ / 大巨獣ガッパ / エンドレス・サマー/終りなき夏


女王陛下の007(1969)

On Her Majesty's Secret Service
👤Maurice Binder

ブルーを基調とした砂時計がモチーフのタイトルシークエンス。砂が落ちるように映像やシルエットが上から下に流れていく。意図的にぼやけた映像や変形させたエフェクトなども使われている。「女王陛下の007」というだけあって、王冠マークを中心として女性のシルエットが左右対称に並ぶ図が繰り返し出てくる。ちなみにおなじみの銃口の向こうのボンドが膝をついて撃つのはジョージ・レーゼンビーだけ。フォントはNews Gothic

1969年 公開映画
卒業 / ローズマリーの赤ちゃん / 真夜中のカーボーイ / 男はつらいよ / ワイルドバンチ / ビートルズ/イエローサブマリン / 地獄に堕ちた勇者ども / 日本侠客伝 花と龍 / 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 / 


007 ダイヤモンドは永遠に(1971)

Diamonds Are Forever
👤Maurice Binder

猫の眼がダイヤモンドに変わる。ダイヤづくしのタイトルシークエンス。裸の女性がダイヤをつけてクロスで光らせたり、猫にもダイヤをつけさせたり凝っている。途中、女性のシルエット2人でダイヤをクルクルしているところが微笑ましい。フォントはFutura

1971年 公開作品
ベニスに死す / 小さな恋のメロディ / 夢のチョコレート工場 / 書を捨て町へ出よう / バニシング・ポイント / ファイブ・イージー・ピーセス / キャバレー / ゴジラ対ヘドラ 


007 死ぬのは奴らだ(1973)

Live and Let Die
👤Maurice Binder

燃えている!赤い背景に炎と目が印象的な女性が映し出される。歌のサビになるとドクロに!下から出た赤・青・緑の腕が炎のように暴れている。今までのモーリス・ビンダーとひと味違うと思いきや、おきまりのシルエットや手のモチーフは健在。ポール・マッカトニーの歌がいい。フォントはNeue Haas Grotesk

1973年 公開映画
燃えよドラゴン / 激突 / 仁義なき戦い / スケアクロウ / ポセイドン・アドベンチャー / ゲッタウェイ / ソイレント・グリーン / ミーン・ストリート / ラストタンゴ・イン・パリ / 修羅雪姫 


007 黄金銃を持つ男(1974)

The Man with the Golden Gun
👤Maurice Binder

組み立て式の黄金銃と女性をメインに展開するタイトルシークエンス。カットがいつもより長め。シルエットがでてくるのは一度。前回が炎だったためか、今作は水をフューチャーしたクレジット。
本編では原作者イアン・フレミングの従兄弟であり、スター・ウォーズのドゥークー伯爵でも有名なクリストファー・リーが悪党スカラマンガを演じている。フォントはNeue Haas Grotesk

1974年 公開映画
スティング / エクソシスト / アメリカン・グラフィティ / 悪魔のいけにえ / タワーリング・インフェルノ / 華麗なるギャッツビー / エマニエル夫人 / 砂の器 / カンバーセーション 盗聴 / モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル


007 私を愛したスパイ(1977) ★

The Spy Who Loved Me
👤Maurice Binder

「黄金銃を持つ男」が少し大人しい映像だったためか、今回は007役のロジャー・ムーアががっつり出てきたり、トランポリンジャンプが出てきたり新しいパターンが満載のタイトルシークエンス。銃身を鉄棒のように使う女性や、帽子だけかぶった女性など視覚的にも楽しく「サンダーボール作戦」以降最高の出来。シリーズ10作記念作品。

1977年 公開映画
ロッキー / 惑星ソラリス / カプリコン・1 / シンドバッド 虎の目大冒険 / サスペリア(1977) / キャリー / 幸福の黄色いハンカチ / 八つ墓村 / 遠すぎた橋 / マラソンマン


007 ムーンレイカー(1979)

Moonraker
👤Maurice Binder

月をモチーフにしているが、トランポリンジャンプやブルー系は「私を愛したスパイ」を踏襲したタイトルシークエンス。途中スーパーマンのように飛ぶ女性のシルエットは、ついにボンドが宇宙まで行く影響か。

1979年 公開映画
スーパーマン / ルパン三世カリオストロの城 / エイリアン  / マッドマックス / ディア・ハンター /  ゾンビ  / 暗殺のオペラ / 太陽を盗んだ男 / 少林寺三十六房 / 戦国自衛隊 


007 ユア・アイズ・オンリー(1981)

For Your Eyes Only
👤Maurice Binder

主題歌のシーナ・イーストンががっつり出てくるMVのようなタイトルシークエンス。前々作「私を愛したスパイ」の雰囲気が漂うが、トランポリンジャンプではなく水中の気泡や泡、泳ぐシルエットが中心。

1981年 公開映画
インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》 / ブルース・ブラザーズ / レイジング・ブル / エレファント・マン / ニューヨーク1997 / スキャナーズ  / 少林寺木人拳 / セーラー服と機関銃


007 オクトパシー(1983)

Octopussy
👤Maurice Binder

レーザー光線とスモークで80s感全開のタイトルシークエンス。赤と青のライトは非常に綺麗。女性の体に沿って007の文字が這う。オクトパシーは名前だが、octo(数字の8) pussy(女性の陰部)でもある。
この年は大人の事情でショーン・コネリー主演の007番外編「ネバーセイ・ネバーアゲイン」の公開があったため、007が2作品ある。

1986年 公開映画
スター・ウォーズ(EP6)/ 戦場のメリークリスマス / 家族ゲーム / ネバーセイ・ネバーアゲイン / ライトスタッフ / 48時間 / ウォー・ゲーム / 楢山節考 / うる星やつら オンリー・ユー / ステインアライブ


007 美しき獲物たち(1985)

A View to a Kill
👤Maurice Binder

ピンクの爪、唇、胸のファスナーが開き、タイトル。蛍光ピンクをキーカラーにして炎モチーフが続き、氷とスキーのシルエットが挟まれる。全体的にはモーリス・ビンダーのいつもの流れ通り。ロジャー・ムーア最後の作品。途中のロジャー・ムーアのシルエットは「私を愛したスパイ」の使い回し。

1985年 公開映画
バック・トゥ・ザ・フューチャー / ターミネーター / アマデウス / パリ・テキサス / ランボー / ヴィデオドローム / ポリス・ストーリー / デューン砂の惑星 / ビルマの竪琴 / ベスト・キッド


後編】はリビング・デイライツからです。


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