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へびが出た!

我が家の吹き抜けの端の部分に、少しだけくぼみがあるところがあって
そこに

「へびが住んでいる。」

と、ある人が言った。

私は吹き抜けのくぼみを見上げる。
へびが住んでいそうな気配はない。
いつもと変わらぬ、真っ白い壁の延長線上に吹き抜けがあるだけだ。

「ふぅん。」

と答えながらも

そんな馬鹿な。

と心の中で一笑に付した。
どうやってあんなところにへびが住めるというのだろう。

そんな話はなかったかのように、私は彼とリビングのテーブルに座って、お気に入りのロイヤルコペンハーゲンのカップから熱い紅茶を一口飲んだ。

出窓のレースのカーテンの隙間からキラキラと午後の陽光が降り注ぐ。
窓の外には鮮やかな黄緑色の葉をつけた木々が風にそよいでいるのが見えた
。吹き抜けの天井につけられたシーリングファンがゆっくりと部屋の空気を循環させる。
まるで木々を渡る風が私たちの頬にも心地よくあたるかのようだ。

「それでね・・・」

私たちはおしゃべりに興じる。

その時、私は足元にぬるりとした生温かい感触を覚えた。
しゅるしゅるとその生温かい感覚は、足首からふくらはぎの方へ這い上がってくる。

ん???

とふと足元を見ると

????
????

へ、ヘビだぁぁぁぁぁー!!!

ぎゃあああああ。



というところで目覚めた。
そう、これは夢のお話。
我が家に吹き抜けなんぞございませんし。

いや、そんなことはどうでもいい。

へび、こわいこわいこわいー!!!

茶色の長さ1メートルぐらいのヘビが
私の左足をらせん状に取り囲むように
しゅるしゅるとのぼってきた。

夜中の3時33分。(またこのぞろ目の数字がなんかコワイ)

心臓がバクバクと早鐘のように鳴っている。

その時、どこからか低音の歌声?が聞こえてきた。

え?
これはまだ夢?
落ち着け私。

ベッドを抜け出し、部屋を出ると隣の息子の部屋から
地の底を這うような、お経のような一本調子の声が聞こえる。
どうやらこれは現実のようだ。


〇§ΜΨ☆ΨΛ♪~


こわいこわいこわい!
寝ながら息子2さんが歌ってる!
別の意味でもこわい。


私は確信する。

私がへびに絡まれる夢を見たのは
息子のこわい歌が寝ている私の潜在意識に届いたからだ!
絶対そう!


ベッドに戻った。

まだあのヘビの感触が抜けない。
隣の2さんの歌も途切れ途切れに続いている。(怖)

あまりに怖すぎて、こんな時間にブルーライトを浴びるのは良くはない、と思いつつ携帯を手に取った。

調べたのは

おいしいメロンパンの作りかた

夢占いで「へび」というキーワードを調べようかとも思ったけど
もし調べて悪いことが羅列されていたら
もう絶対眠れない!と思ったので
その時ぱっと思いついた平和そうな検索ワードを選んだ。

正直、メロンパンの作り方じゃなくても
メロンパンナちゃんの絵かき歌でもよかったし
おいしいメロンパン7選とかでもよかった。

なんでメロンパンかって?

なんか”メロンパン”って言葉が平和そうな響きじゃない?
え?違う??

一通りメロンパンの作り方を確認して
どうやら足にへびも巻き付いてないし
息子2さんのステージも終わったようだったので
もう一度寝ることにした。


そして朝。

息子2さんが起き出してくるやいなや

「昨日の歌はなんだったんだ!」

と問い詰めた。

2さんぽかーん。

「なんの話?」

「なんの話って、夜中にあなたがこわいお経のような歌を歌っていたせいで
私こわいへびの夢見たんだから!絶対2さんのせい!」

と。わあわあとまくし立てた。

「それ、俺のせいなの?理不尽ー。
だって俺それ知らないもん。それって昨日の夜、ハリーポッター読んでたからじゃないの?」



え?



昨日私の足に絡んでいたのは、

名前を言ってはいけないあの人

だった?

確かに読んでいましたけど。

そう言われるとそんな気もしないでもない。

なんだかそう言われると自分で自分の首をしめた気がして
悔しくなった。

「いや、違う!絶対2さんのお経のような歌のせいだからああ!」

と精一杯の虚勢を張って、こわいヘビの夢は2さんのせい、ということにし
この話をちゃっかり終わりにした。


そして朝ごはんを食べてちょっと落ち着いた頃、
ドキドキしながら

夢占い へび

と検索してみた。

すると

金運アップ、大きな幸運の予兆

とどのサイトを見ても吉夢だと書いてあった。

わあお。
こわいと思っていた夢は吉夢だった?

だったら寝る前にこれからもハリーポッターを読んでもいいなあ。
2さんのお経のような歌声も、まあ悪くもないかな。

でもへびは遠くから眺めるのが精いっぱい派です。
足に絡みつくのは勘弁して。

今日はよい夢が見られるよう願うばかりだ。

























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