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【本の処方箋】美容液みたいな本

いわゆる美容のHow to本ではないけれど、
読み終わるときれいの成分がすーっと浸透していくような本を集めてみました。

『メモランダム』(長谷部千彩)

エッセイとショートストーリー集なのですが、いい意味で生活感がなくて無国籍な感じ、気だるさ、浮遊感、それでいて清潔感や品のよさがあり、書かれている内容や意味を頭で理解するというよりは、ただこの文章の中に漂っていたいと、感じるタイプの本です。
装丁、時折差し込まれる写真、本文の書体、全てが美しくて、『私が好きなあなたの匂い』と合わせて、繰り返し読み返している本です。

『マチネの終わりに』(平野啓一郎)

平野啓一郎さんの文章は難解で、私にはとてもとても……と思っていたけれど、この作品は読みやすく美しい文章で描かれた大人の恋愛小説です。
描写の美しさとストーリーの切なさで胸がいっぱいになります。終わり方も洒落ている。
運命なんてあるのかないのか分からないけれど、それでもこの作品とか、『君の名は』とか『La La Land』があんなに大ヒットするということは、みんな無意識のうちに磁石みたいに惹かれ合う人を探し続けているのかもしれませんね。

『チョコレート革命』(俵万智)

確か中3の古文の授業のときに先生が授業で取り上げてくれたのが、この作品との出会いでした。
(それにしても、15歳の私たちに先生は何を伝えたかったのだろう……)
当時はちゃんと意味を理解し切れていなかったけれど、それでも大人の世界を垣間見たような、ちょっとドキドキした感覚を覚えています。

いわゆる、会いたいときに会えない恋がテーマの歌集です。
五七五七七という文字数の制限が、余計に歌を艶っぽくしているんだろうな。制限のある自由。
『サラダ記念日』のさわやかで甘酸っぱい感じと対比して読むのも楽しいです。
それにしてもちょっと不自由さがある方が、深みや色っぽさ、美しさが出るのはどうしてなのでしょう。
枯れる寸前の大輪の花とか、腐る寸前の果物とか、ギリギリの感じでこそ生まれる美しさに私は惹かれます。
(余談ですが、最近20年ぶりくらいにザ・イエローモンキーの90年代の映像(特に1997年)をyoutubeで見つけて、若き日の吉井和哉さんの狂ったような美しさに圧倒されました。そして寝不足。当時中学生の私には刺激が強すぎたのだろうけど、どうしてもっと早く気づかなかったのだろう……)

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