
【16】自己肯定感の育み方(1)
お待たせいたしました! ここまで何度も話してきた自己肯定感についての大トリ、「自己肯定感を育み方」の回がやってきました。
自己肯定感を高める方法は、書籍やYouTubeなどでもさまざまに紹介されていますので、ご自身が「これだ!」と思う手法を選んでもらえればいいとは思っていますが、「これだ!」というものにまだ出会えていないという人にぜひおすすめしたい4つのステップをご紹介します。
トレーニングは裏切らない
4つのステップについて具体的に説明する前に、まずお伝えしたいことがあります。
それは、自己肯定感を育むことは、筋トレなどと同じようなトレーニングだということ。
ものすごく単純化して言うと、自己肯定感が高くないということは、あなたという人間が、何らかのきっかけで、自己肯定感が高くないように物事を見る&考える、という脳のネットワークを作って、そのネットワークを繰り返し使ったことでそのネットワークが優位になって、それ以外のネットワークがうまく働いていないという状態です。
これはもう無意識の習慣となっていますから、1回や2回何かの手当てをしたら劇的に変身するということはまずありません。
いや、もしかしたら一時は、「あ、変われたかも!?」と実感できるかもしれません。でも、それは継続しない。なぜなら、脳は生存のために省エネを好むからです。
どういうことかというと、脳にとっては慣れ親しんだ方のネットワークの方が自動運転で省エネになりますから、新しいネットワークよりもどうしてもこれまでと同じネットワークを使いたがりますし、結果、無意識にそちらに戻ってしまうということです。
だから、変わるためには変わることに意識的にエネルギーを注ぐ必要があります。
でも、筋トレと同じで、地道に、(やり方を間違えずに)トレーニングを続けたら、確実に変化は起こります。
ですから、自己肯定感の育む時も、筋トレのような意識で取り組んでいただきたいのです。
前置きが長くなりました、いよいよ具体的な方法をお伝えします。
日常で4つのステップを意識する
筋トレを例に出したので自分には無理かもとおののいた方もいらっしゃるかもしれませんが、自己肯定感を育む4つのステップは、それ自体はいたってシンプルです。
ステップ1:知る…自分の感性・価値観を見つける
ステップ2:信じる…自分の感性・価値観を信じる
ステップ3:実行する…自分の感性・価値観を行動に移す
ステップ4:褒める…自分の感性・価値観を見つけ、信じ、行動に移したことを褒める
これら4つのステップを日々の小さな出来事の中で、どれだけ丁寧にやっていけるかが、このトレーニングの肝です。
それぞれ見ていきましょう。
ステップ1:知る…自分の感性・価値観を見つける
何よりも大事なステップです。というのも、ステップ2〜4は、このステップ1で見つけた自分の感性・価値観をどう扱うかという話なので、そもそも信じたり、実行したり、褒めたりするのが本当の自分の感性・価値観でなければ出発点からずれてしまいます。
自分の感性・価値観を見つけるといっても、大きなことでなくて構いません。たとえば、飲み会のスタートで、幹事は「みんな、とりあえずビールでいいよな?」って言ってくるけれど、本当はチューハイが気分だな…そんな小さなことでいいから、自分の本心を自覚することからスタートしてください。
いやいや、毎回そんことやっていられないよ、という声が聞こえてきそうですが、大丈夫。これはあくまでトレーニングです。やがて自己肯定感を高く物事を見る&考える脳のネットワークが強くなってきたら、そこまで細かくやらなくても自動運転のようにできるようになります。
ここで、「ビールでなくチューハイが気分」と思ったことを実行できるのがベストですが、まずは、自分はそう感じていると知ること、そこがスタートです。
ステップ2:信じる…自分の感性・価値観を信じる
ステップ2はステップ1で見つけた自分の感性・価値観を、信じてあげること。
チューハイの例で言えば、「みんながビールを言っているのに自分はチューハイだなんて、協調性がないんじゃないか」とか、「飲み会の乾杯の飲み物にこだわるなんて狭量じゃないか」といったふうに捉えないことです。
じゃあ、どう捉えるかというと、「誰が何と言っても自分はビールよりチューハイがいいらしい」という自分から出てきた感覚をそのまんま自分が肯定してあげればいいんですね。
この段階では、実行に移す必要はありません。ここから実行に移すのに抵抗がある人は、まずはステップ1とステップ2を日常でひたすら細かく丁寧に実践してみてください。ある時、なんか変わっている自分にきっと気づけるはずです。
ステップ3:実行する…自分の感性・価値観を行動に移す
ステップ1、2ができるようになったら次のステップは実行する、です。
この時に大事なのは、実行することは成し遂げることではない、ということです。
しつこくチューハイの例で言うと、「とりあえずビールでいい?」と注文をとられている時に、「あ、ビールじゃないのでもいいですか?」と言ってみる。結果、「いやー、ビールでいいだろう?」と押し切られたとしても、自分の意思を言葉にして出した、という時点で立派に行動に移したと言えるんですね。
多くの場合、望みを実行する=望みを達成すると思い込んでいるから、そうならないと落胆し、結局、行動することを止めてしまうということが起こっています。だから、実行するといってもその時にできる小さなことでいいし、実行した結果が望みと違っても自分の感性・価値観が否定されているわけではない、という意識を持っていただきたいのです。
ステップ4:褒める...自分の感性・価値観を見つけ、信じ、行動に移したことを褒める
ステップ4は自分を褒めることなのですが、これはステップ1ができた時、ステップ2ができた時、ステップ3ができた時、毎回、ぜひやってください。
たとえば、ステップ1なら「チューハイが飲みたいという自分の本音に気づけた、えらい、自分」と心の中で声をかける。ステップ2までできたなら「自分の本音を否定せず、『自分はこう思っているんだなぁ』と受け止められた、えらい、自分」です。
ステップ3までできたら、これはもうお祝いしてもいいくらいです。「ビールじゃないものが飲みたいと口に出せた、自分、すごい」!
気をつけたいのは、あくまでも、行動に移した結果ではなく、自分の感性・価値観をもとに行動を起こせたというその勇気を褒めることです。
以上が自己肯定感を育む4つのステップです。どうでしょう、簡単にできそうじゃないですか?
ちなみに、動作学では、自己肯定感を「自己受容」と「有能感」の掛け合わせ、と捉えているのですが、この4つのステップはどちらかというと「自己受容」が自然とできるようになるトレーニングと言えるかもしれません。
有能感を育む方法は、次回、ご紹介しますね。