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#小説
#7 こんな空の下で
笑顔だ。笑顔を作るんだ。
私がお父様から最初に習ったのは、フォルテールの弾き方でもなく、音楽の基礎でもなく、そんなことだった。
いつからか私は、笑顔を忘れていたのかもしれない。いや……いつか、なんて曖昧な時期ではなく、それは確かに、私がこの家に来てからのことだった。
この家?
ここはどこなんだろう?
私は本当にそこにいるんだろうか?
ここは私の家じゃない。私の家はどこ? 私はいった
#5 三人目のマリア
手にしたタクトをゆっくりと譜面台の上に置き、部屋を満たしたフォルテールの音が静まるまで、わずかな時間、目を閉じる。彼にかける第一声は、誉め言葉ではないだろう。しかし、迷いながらも模索するその音色は、評価されるべきかもしれない。
だから私は、閉じたときと同じようにゆっくりと目を開け、楽譜を閉じた。
「よろしい。今日はここまで」
時刻は、十七時をわずかに越えた頃だった。学生の個人レッスンをす