電気街の怪泥
古い伝統から解き放たれた霊媒女子高校生が独自のやり方でイタコ業を営んでいた。
ある日のこと。
とある電柱から一体の生命体が電気を吸収していた。
そこを通りかかった体格の良い青年が怯えている霊媒高校生に声をかけた。
すると電気を帯びたスライムが何かを呟き苦しんでいる。
「こ…こ…このまま…こ…この…まま…」
青年は相手が人間ではないと分かると軽装備で臨戦態勢に入る。
霊媒女子高校生は電気対策にとゴム製の手袋、靴とお札を青年に渡した。
霊媒女子校生は青年がムエタイトレーナーという事を察したのだろう。
伊達に人は見ていないと感じた青年は襲いかかってくるスライムへローキックで様子見をし、項垂れた直後ジャブを決めた。
霊媒女子高生は「ムエタイの技じゃない?」と驚いていたが元キックボクサーだと技でスライムに分からせる。
そして霊媒女子高生は念を唱えて青年を強化させると急所を見抜いて拳を突きつけた。
昔、試合をしていた時にもこうやってパンチで勝利したかったと言わんばかりの勢いで。
「あ…あ…こんな…こんな!!!!」
霊媒女子高生は青年に次の指示を出した。
「こいつは霊じゃない。
超能力者の念や宇宙人の類かと思っていたがどうやら音声電波を独自の回路で組み合わせて自分の言葉を出している。
思いを伝えられなければまた暴れだしそうだ。」
青年はこの女子高生が何者なのか分からなかったがあまりの説得力に押されている。
「けど、このスライムは当然だけど打撃が通じない。それなのにこれだけ効いているのはどういうことなんだ?」
「あたしのお札が通じるか試していた。
念の為にさっき渡したゴム手袋等には霊体チェックが出来るか反応するようにしたけれど。」
青年は霊媒女子高生のボディガードかつスライムの正体を探る為に利用された訳だが怒る年齢ではないので黙って聞いている。
よく分からない部分もあるが要するにこのスライムは霊が独自の技術で機械化したものらしい。
その間スライムは言葉を紡げる。
「お…わた…こんな姿でいるつもりじゃなかった!
ここでただ動くだけでも消耗するのなら…いっそのこと周りを感電させて…」
青年は大きく蹴りあげスライムを止める。
霊媒女子高生が何者か分からないがまさか驚いている所を助けようとしたらこんな経験をすることになるとは。
「現役の選手じゃないのに鋭い蹴り。」
「君は格闘技を知ってるのか?」
「こういう霊媒を生業とすると色んな人間や現象に出会うから。」
「そうか。なら次の指示を頼むよ!」
二人は初対面だが息のあったコンビネーションでスライムの暴走を止めた。
「もう…電気が切れる…このまま…また眠るのか。」
スライムは放電しながら電柱へ吸い込まれていく。
目的は不明だが恨みというチープな動機ではなくて意志を持った故に生きようとしたスライムの本能に二人は感心していた。
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