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反省禁止令その① 『人を反省させてはいけない』

はじめに

今回の参考図書はこちらの本です。

ちょっと衝撃的なタイトルですが、刑務所で受刑者の更生の支援に長年携わった著者の方が、実例を交えつつも

「厳罰主義」つまり誰か悪いことをした人に厳しい罰を与えたり、強いプレッシャーをかけて猛省を促すという事の問題について論じた本になります。

目次


反省について

便宜上、反省を以下の二種類に分けます。

①外から。他者を反省させる

②内から。自分で自分を責めるというか反省する

今回は、①の誰かを反省させる事、について取り扱います。

なぜ人を反省させてはいけないのか


なぜ人を反省する事がいけないというのか?
本書で語られている理由は以下の2つです

①反省は抑圧を生み、抑圧された感情は「時限爆弾」と化すから

理由の1つは、反省は抑圧を生み、反省させられた側の感情に蓋をしてしまう行為だからです。

人が何か悪いことをやるということには、なにかしらの理由があるはずです。

反省させるというのは、悪事に至った背景や根本的な感情といった根っこの部分に目を向けず、力で感情を一時的に抑制してしまうようなところがある。

そうしたアプローチは、即効性がありすぐに表面上は「鎮圧」できるかのように見えます。

でも反省させられた側の不満感情に蓋をして、一時的にごまかしているに過ぎません。その蓋をされた感情は溜まりにたまって、いずれ時限爆弾のように爆発してしまうことになります。

これが罪を犯した人であれば、再犯に手を染めてしまうということになりますね。

②多くの場合、反省したフリがうまくなるだけだから

罰はできるだけ受けたくないし、受けるとしても軽くしたい。まあそう考えてしまう部分も、人間の基本的な心理としてありますよね。

そうした心理が人間のベースにあるものですから、厳罰主義的なアプローチを行っても、「反省してるフリだけ見せつけておけばいい」と、

演技だけがひたすら上手くなってしまう・・・というケースがしばしば、見られられるそうで。

なるほど、確かに誰かに「反省しろ」っていきなり迫られた時って、感じるのはまず「反発」ですよね、正直。

いきなり道徳を解かれても受け入れる事なんてなかなかできるもんじゃあ、ありません。

「罪を軽くしたいから、従ったふりをしておこう・・・」

という心理も、なんだか分かるような気がいたします。

僕らはなぜ反省を促すのか?



当事者目線と支援者目線の混同

では、なぜ我々は反省を人に促してしまうのか?
それは、「当事者目線」と「支援者目線」が混同している事が原因ではないでしょうか。

当事者目線

悪事を働いた人に対する怒りが収まらない。心から謝罪して欲しい。反省して欲しい。自分と同じだけの痛みを味わうべきだ!といった、

被害者・当事者の目線に立った考え方です。

被害を受けたのですから、当事者は相応の怒り・悲しみを抱えるのも当然ですよね。でも、あくまでそれは「当事者だけの話」・・・ここが、ポイントです。

支援者目線

その人が悪事を再び行わないためにはどうするか?同じ過ちを繰り返さないためにはどうすれば良いのか?

といった、支援者、あるいは世の中から犯罪が減って欲しいと考える人の目線に立った考え方です。

当時者以外は関係ない

誰かが悪いことをしてしまった場合、当事者以外の人にとって重要なのは、その人が立ち直る事だったり、再犯を行わないようになるという「目的」なんじゃないかと思うのですよね。

ところが、そこを忘れてしまい、ワイドショー的な感覚でもって

罪を犯した人間を「なんて悪い奴だ!反省させろ!謝罪させろ!制裁を与えろ!断罪せよ!」

と、つるし上げに奔走してしまうような事がある。

でも僕らにとって直接関係があるのは、その人がまた悪い事をするかどうかのただ1点じゃないですか。それで犯罪に巻き込まれちゃうとか。

その分離ができていないと、例えば罪を犯した人を支援する立場の人でさえ、「お前は悪いことをしたから、制裁する!反省しろ!」なんて、さらに被害者サイドに立って制裁を加えてしまう、怒りをぶつける・・・

なんて混同も生じ得るのではないのでしょうか?

育児にも応用がきく

本書は、刑務所で受刑者の更生の支援に長年携わった著者の方が書かれた本ではありますが、相手が犯罪者じゃなかったとしても、基本的な原理は同じです。

子供が「問題行動」を起こした時に、どう関わるか?
どんな目線で声を掛けるのか?

いつの間にか加害者側に立って、怒りのつぶてを一緒に投げてしまうのか?
はたまた、支援者としての目的を忘れずに関わるのか?

多くの示唆を与えてくれる一冊でした。

次回予告

具体的にどう関わればいいのか?については今回は書ききれなかったため、次回に譲ります。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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