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犬の目

猫の日だそうですが、犬の夢を見たので犬の思い出の絵を描きました。

この、となりの家から来た犬についての話


小さい頃、隣の家に番犬がいた。
雨の日も風の日も門扉に繋がれっぱなしだった。
残飯(というかほぼ生ゴミ)しか与えられてないようだった。
だからいつもヘロヘロだった。

それでウチの祖母が勝手に餌をやっていた。ウチでも犬を飼ってたし、祖母は野良猫や鳩にも餌やりしちゃう近所迷惑なタイプの婆さんだった。

隣の犬は餌をやるたびに「かたじけない…」という表情で頭を下げた。
番犬としてはポンコツだった。

次第に祖母は大胆になり、隣の番犬のヒモを勝手にほどいて散歩まで行っていた。自分も一緒に散歩した。
それに対し隣の家族は怒るかと思いきや、いつもありがとうございますという感じだった。いま考えると逆に怖い。なにか開き直ってたような気がする。

そんな状態が数年続き、やがて向かいの家族が引っ越すことになった。それで犬をもう飼えない、保健所送りにするかもとにおわせて来たらしい。
しかし自分から「引き取ってくれ」とまで言わなかったという。それを自ら頼む責任すら回避していたんだろう。
結果ウチからの申し出という形で、引き取ることになった。

うちに来てすぐ改名をした。隣の家での名前は捨てさせた。

それからは、よく食べ、よく散歩し、よく生きた。
ジャーキーやボーロをあげると、やっぱり「かたじけない…」をしつつガッツリ食べた。大人しく素直な犬だった。番犬としては相変わらず無力だった。郵便屋さんにも頭を下げた。

隣の家に繋がれていた年数より長くウチで過ごした。

ただ、先住犬と同じように世話しても、いつもどこか心配そうな目をしていた。
この世界に対する不安の目。
一度でも裏切られた犬だけが持つ目は、変わらなかった。




追記
隣の家が悪で我が家が正義という書きぶりになってしまったかもしれないが、ウチの祖母もまあまあヤベー奴だったという事を付け足しておきます。野良猫や鳩にも餌をやっちゃうのはみんな困ってました。他にも肉食べないとか変わってました…そんな人じゃなきゃよその犬を勝手に散歩なんか行きません。

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