謎のルール

朝起きて、寝ぼけ眼で歯を磨いている時、ふと思い出したことがある。
オレと弟は小学校高学年まで、朝に歯を磨く習慣が無かった。
と言うか、そんな習慣が一般的にあることすら知らなかった。
もちろん、ネグレクトを受けていたわけではない。
ただ、お母さんが「夜にだけ歯を磨けばいいよ〜」と教えていただけだったのだ。
そのせいもあり、小学校の時はもっぱら口臭男子代表だった。
まあ、今も喫煙者だから、口が臭くないとも自信を持って言えないが……。
それはさて置き、今思い返せば、そんな小学生時代の同級生は、よくそれに耐えて遊んでくれていたなと思う。
当時の悪友も、喧嘩をした時ぐらいしか「お前、口くせえんだよ!」とは言って来なかった。
結果的に仲直りもしてくれていたわけだし、本当に寛大な友達だった。
結局、中学に上がる前ぐらいに、そんな謎のルールは是正されたが、お母さんはなんであんな指導をしていたのだろう。
と言うことで、お母さんにLINEで聞いてみた。
すると、
「そんなことありましたっけ?覚えてません。ごめんなさい」
と、Siriみたいに素っ気ない返事が返ってきた。
絶対謝る気無いだろ。
この後に、なぜかルイ・ヴィトンのスタンプで返してきたし。
何だよ、ルイ・ヴィトンのスタンプって。
そんな当てにならないお母さんの返答は無視して、オレは自分なりにある推測を立てた。
おそらく、あれはお母さんがどこからか仕入れた民間療法だったのではないだろうか。
昔は、今のようにネットも普及しておらず、都市伝説的なトンデモ医学が氾濫していた。
それを鵜呑みにし、お母さんは謎のルールを教え込んだのではないだろうか。
いずれにせよ、そのままの生活だったら、虫歯だらけで、歯もボロボロだったに違いない。
根も葉もない噂で、根も歯も無くなりそうだったわけだ。
あくまで推測だけど。
これが歯無しの話にならず本当に良かった。

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