ひとでニャし

日中、仕事に出ている彼女から「実家の猫が亡くなった」と言う連絡が来た。
ご実家のご家族から話を聞かされた時、さぞ悲しかったに違いない。
ペットを飼った経験のないオレなんかでは計り知れないはずだ。
ただ、それと同時に、某大企業の創始者の訃報を取り上げるニュースが、写真と共に通知で入ってきた。
そのせいで、オレの頭にろくでもない発想が浮かんでしまった。
(この創始者のニュースをスクショして、「猫ちゃんってこれで合ってる?」って言いたい……)
もちろん、オレだって最低限の倫理観は持っているので、それがいかに不謹慎なことかは分かっている。
自分の家族が同じ状況になった際、そんなことを言ってくるヤツが居たらブッ飛ばしてやりたい。
何を言えるかが知性で、何を言わないかが品性なのだ。
しかしながら、口に出さないマナーは弁えていても、思考を止めることは出来ない。
鎖野郎の正体をクラピカと結び付けてしまったら、いくら「知らない」と言っても、パクノダの能力に抗えないのと一緒だ。
その連絡を受けてから数時間後、帰宅した彼女は見たことがない程むせび泣いていた。
オレもその様子を見て悲しくなった。
何よりここまでペットロスで悲しんでいる恋人に対し、どこぞの知らないおじいちゃんの写真を送り、「猫ちゃんってこれで合ってる?」と送ろうと画策していた自分自身に悲しくなった。
何なんだ、オレは。
頭の中では、何故か東野幸治氏の亀のエピソードが思い出された(知らない人はググって下さい)。
そして、これほど恵愛を受けていた猫ちゃんだ。
自分の飼い主家族に対しサイコなユーモアをぶつけようとした悪しき他人ことオレが憎くて仕方ないだろう。
もし、可能であれば何かバチを与えて来るのではないか。
オレは、主人想いの可愛い猫ちゃんが夢に登場し、襲ってくる様子を容易に想像出来た。
そうなったら、しばらくの間、ねこみそうだ。

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