軽スポーツ部と高級レストラン

高級レストランに行く機会があった。
老舗百貨店の中に入っている某有名高級ホテルの系列店だ。
偉手の方に誘われて行ったのだが、本当に恐縮してしまった。
理由は、単純明快で、オレがその辺の人より俗っぽい人間だからだ。
まず、小綺麗な装いのウェイターさんがわざわざ入口までお出迎えをしてきた時点で、背筋に緊張が走った。
と言うか、そもそもウェイターさんなんて呼び方で合っているのか?
ファミレス過ぎないか?
そんな変な疑問が浮かぶほど、オレはその雰囲気に馴染みが無かった。
そこから席に案内され、同席した相手方のご厚意もあり、鰻重をご馳走になる。
ホロホロ崩れ落ちる鰻の身と繊細に粒立った米の見事なマッチ具合は、感動するほど美味かった……気がする。
そう、オレは場違いな自分に気まずさを感じていたこともあり、(美味かった……よな?)と言うあやふやな印象と高校野球の話をした何となくの記憶しか残っていないのだ。
そのぐらい居たたまれなさをひしひし感じていた。
加えて、そんな意識を片隅に置いたまま、上述した高校野球の話を聞いていたものだから、自分をそこに重ねてしまった。
と言うのも、(あれ?オレって軽スポーツ部のヤツみたいじゃないか?)なんて思ったのだ。
この様子は、まるで甲子園常連の強豪野球部に軽スポーツ部員がノリで参加してみた結果、鼻っ柱を折られているみたいだった。
ダサ過ぎる。
ハイクラスな身なりをした人たちの中、Amazonで買った一万円しないスーツを着たオレは、ユニフォーム姿の野球部員たちに混じる体操着姿の軽スポーツ部お調子者くんとまったく相違なかった。
「え?球ってこんなに速いの?打てなくね?っつーか、硬くね?痛くね?」
当たり前だ、練習していないんだから。
これを踏まえて、今後は高級レストランから出来る限り身を置きたい。
軽スポーツ部には、軟球レストランぐらいがお似合いなのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?