フォーエバーの居酒屋

いつかの年末、仕事に疲れたオレは酒を飲みたくて堪らなかった。
しかし、同じ部署の全員はすでに帰宅していたため、他部署の先輩を誘った。
すると、
「ずっと気になってた店があるんだよ〜」
とのこと。
何でも通勤ルートで気になる居酒屋があり、そこへと行きたいそうな。
ただ、オレは嫌な予感しかしなかった。
と言うのも、オレは入念に事前リサーチをして、ちゃんと美味しいお店に行きたい派なのだ。
ノリでお店を選ぶ派は、経験上、信用出来ない。
とは言え、せっかく提案してくれている訳だし、引っかかりはあれど、お店へと足を運んだ。
到着してみると、そこは見るからに年季の入った店構え。
入店してみても、客は誰一人居ない。
不衛生で、暗ぼったく、ベタな表現をすれば、お通夜みたいだった。
そんな中、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のフォーエバー似の大将が咥えタバコをしながら、人数を聞いてきた。
答えるオレたち。
その後、ホールの無愛想なおばあちゃんが、卓まで案内してくれた。
席に着き、店内に掲示されているメニューで、注文を試みる。
「生を二つと〜」
「……うち、瓶しか無いから」
「ああ、じゃあ瓶で。それと、オススメに書いてあるがんもどきと〜」
「がんもどき無いから」
「じゃあ、こっちの鯨の刺身と〜」
「鯨も無いから」
何にも無いらしい。
じゃあ、オススメに書くなよ。
なので、仕方なく、瓶ビールと刺盛りだけ頼んだ。
そして、頼んだメニューを口にすると、どちらもしっかり不味く、何も予想を裏切らなかった。
いや、ここまでしっかりフッてたら、逆に美味いパターンあれよ!
と言うことで、結局、残念飲みとして即お開きになってしまったのだった。
切ない。
それにしても、あそこまでしっかり不味いパターンも、珍しい気がする。
ひょっとすると、本当は美味い店なのに、一見さんだからナメられていたのかもしれない。
オラオラすれば良かったなあ。

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