祖母と寝酒
叶わぬ夢がある。
それは、祖母と二人で深夜にお酒を飲むことだ。
と言っても、どこから説明すればいいものか。
う〜ん。
とりあえず、まず祖母は健在なのでご安心を。
その上で話をする。
実家に住んでいた学生時代、オレが最も落ち着ける時間帯は、深夜0時頃だった。
親や姉弟も寝床に入る日付変更線を跨いだ頃、家族も多く騒がしかったリビングが一気にがらんと空く。
そんな中、一人でのんびりテレビを見たり、ラジオを聴いたりする時間が好きだった。
そして、そのぐらいの時間に、不定期で祖母が寝室からやってくることがあった。
その理由こそが、寝酒を飲もうとして、だったのだ。
お酒を飲んでいる祖母と夜中に二人で喋る時間が、オレはテレビやラジオを堪能する時間よりも好きだった。
日常で起きた出来事や家族に対する本音など、多くの他愛もない話をしていた。
しかしながら、当時のオレは十代半ばぐらいの年頃だったので、当然シラフだ。
祖母と同じようにお酒を飲んで、話をすることは出来なかった。
そこからお酒が飲めるようになった今、珍しく深夜に晩酌をすることがあると、この思い出を懐かしんでしまう。
そう、今となっては冒頭に書いた通り、二人でお酒を飲む夢は叶わないのだ。
と言うのも、オレが実家をすでに出ていたり、おばあちゃんもお酒が飲めない身体になっていたり、様々な理由がある。
極め付けに、今夏に実家を建て直したことにより、二世帯住宅のような環境となってしまい、住まいそのものが別となってしまった。
そうなってくると、もう肩を並べて飲むことはほぼ確実に出来ないだろう。
今後、あの静かな空間で二人だけでお酒を飲む夢は、一生叶わないと言っても過言ではない。
一抹の寂しさを感じる。
さて、そんなことを思い出した今晩は、一人で深夜に寝酒でも飲んで、床に就こうかな。
叶わない夢でも見ることぐらいは出来るかもしれない。
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