come again

高校に入学したての頃、同級生と受験について談笑をしていた。
地域で二番手の進学校だったこともあり、皆んな受験への思い入れやエピソードを多少なり持ち合わせていた。
受験の内容は、ペーパーテスト、集団面接、個人面接の3種類だ。
もちろんペーパーテストの比重が一番高く、面接は質問に対し見当違いな答えをしないかどうか見る程度のものだったと思う。
そんな面接について、友達の一人が話し出した。
「そう言えばさー、個人面接でオレの前に居たヤツ、尊敬する人物を聞かれて何て答えたと思う?m-floのVERBALだってよ!あいつ絶対落ちたわー」
ドッと笑いが起きた。
それもそのはず、尊敬する人物を聞かれた際の模範回答は、家族や恩師、歴史上の偉人が一般的だろう。
中には、芸能人を答える人も居るかもしれないが、その場合は、老若男女問わず知られている必要がある。
なぜなら、会話が続かず、成立しないからだ。
少なくとも、m-floのVERBAL氏が学校の中年教師たちに認知されているとは、到底思えない。
全員の共通認識として、そう抱いているからこそ、笑いが起きたのだ。
……オレを除いて。
そう、何を隠そう「m-floのVERBALです」と答えたヤツは、オレなのだ。
当時、HIPHOPやラップにハマっていたオレは、そのキッカケとなったm-floのVERBAL氏を、尊敬する人物として答えていた。
そもそもド痛だったこともあり、普通であれば考えられる一般的な回答なんて知る由も無かった。
こんなヤツ、全国の受験生を探してもオレ以外には居なかったはずだ。
良いのか悪いのか、友達もその正体がオレとは知らずに話していたのだろう。
あなたが話題にしたピエロ、面接で落ちず目の前に居ますよ。
もちろん、その時には名乗り出ず、事なきを得たが、今思い出しても顔が赤くなる。
金曜日のスカラで踊り明かし、忘れたい出来事だ。

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