チュッパチャプスの禿げ山

家に物悲しく佇むチュッパチャプスのツリーがある。
よくあるヴィレッジヴァンガードやドン・キホーテで売っているアレだ。
だが、我が家の代物は、ツリーと言うにはあまりにも寂しく、まるで禿げ山だ。
おそらく数十本は挿せる仕様だが、数本しか挿されておらず、悲壮感が漂っている。
このツリーは、確か一年半ぐらい前に会社で貰った物だ。
年末に副社長がお得意先からプレゼントされ、全員に飴ちゃんのみ配り終えた後、ツリー部分のみを譲り受けた。
当時、引っ越したばかりだったオレは、(映画観ながらよく咥えるしな〜)なんて軽い動機で、持ち帰ってしまった。
その結果、飾った途端に何故か熱が冷めた。
別段、理由も無い。
人間は、本当に自分勝手な生き物だ。
そこから、申し訳程度にチュッパチャプスを数本ブッ挿されたツリーは、貧相な空間を演出するアイテムと化した。
また、その挿された数本のチュッパチャプスもおそらく賞味期限が切れている。
厳密に言えば、チュッパチャプスに賞味期限の記載は無いのだが、インターネットで調べる限り、どうやら製造日から一年ぐらいが目安らしい。
しっかり過ぎているではないか。
多少、無理をすれば口に出来るぐらいの過ぎ方ではあるが、そこまでの勇気は持ち合わせていない。
人生で数回の食中毒を経験したオレとしては、リスクを侵してまで舐めたくないのだ。
あと、念のために言うが、チュッパチャプスは大好きなのだ。
とは言え、人生にはどうしてもブームの周期が存在する。
その第何次かのブームが過ぎたタイミングに、このツリーを手に入れてしまったことこそが、今回一番の失敗だったと言えるだろう。
もうとっとと捨てたい。
ただ、奇を衒った格好でも無い普通のおっさん(オレ)がこのツリーを捨てる姿は、なんかちょっとバカみたいだな。
誰にも見られたくない。
チュッパチャプスは舐めても、オレのことはナメないでくれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?