胡乱な客

エドワード・ゴーリー氏と言う絵本作家が居る。
作品は、残酷さやナンセンスさが特徴で、しばしば「大人向けの絵本」なんて称されている。
日本で言えば、他と違う自分をアピールしたいサブカル女子が、ヴィレッジヴァンガードで本を見つけてキャッキャ騒ぐイメージだ。
偏見だけど。
その中で、原題『The Doubtful Guest』と言う作品がある。
「Doubtful」は訳すと「怪しげ、疑わしい」なんて意味だ。
ストーリーをざっくり説明すると、奇妙な生物が、なぜか食卓に参加したり、いたずらをしたり、訳の分からない行動を繰り返しながら17年間も居座る……、みたいな話だ。
デザインのおぞましさ含め、何とも不気味なテイストである。
邦題は『うろんな客』。
この邦題について、オレは今まで「あー!原題が色んな(面を見せる)客って意味合いで、敢えて不気味さを醸し出すためにスペルミスしてたんだな!それを邦題で上手く表してるなー!」と思っていた。
そして、それが全然違ったことに今さら気付いた。
と言うのも、暇潰しに難読漢字の本を読んだ際、「胡乱(うろん)」と言う言葉が出てきたからだ。
「胡乱」の意味は、まさに「確かでなく、怪しいこと。うさんくさいこと」と記されている。
原題の和訳として、ピッタリ過ぎるだろう。
そこから調べてみると、和訳担当の柴田元幸さんが、「奇妙な」の類義語から「胡乱な」に行き着き、「そう言や、いしいひさいち氏の漫画で『うろんな問題』って言い回しがあったけど、こう言う意味だったんだなー。よっしゃ!この言葉使ったろ!」となったことが経緯らしい。
気持ち良いほどに気持ち悪いタイトルで、めちゃくちゃセンスを感じる。
素敵だ。
ただ、それにしても何だよ、(うろん)って。
普通に読んだら(うらん)だろ、まったく。
オレは、こんな難しい読み方に擦り寄りたくない。
絶対に媚びだけは売らん。

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