久々のCDショップ

いくら夢中になっても、歩みを止めなければいけない時がある。
これは、そんな話だ。
久しぶりにCDショップへと行った。
何も目的があった訳ではない。
予定までの待ち時間のちょっとした暇潰しだ。
そうでも無ければ、このサブスク全盛期にわざわざ足を運んでいない。
入店すると、名の知れた全国チェーンであるはずが、大分閑散としていた。
お客さんもインターネットに疎そうな中年の方々しか見受けられない。
まさかこんな光景を目の当たりにする時代が来るとは。
と言うのも、サブスク全盛期に〜などと書いているが、数年前までは自分もCDショップに足を運ぶタイプの人間だった。
それがいつしかサブスクの魅力に取り憑かれ、今となってはCD再生機器すら自宅に無い。
世間で必要とされる媒体は、時と共にどんどん移り変わって行くのだなあ。
訪れたCDショップの風景から、ぼんやりとした寂寞感に苛まれてしまった。
その寂寞感の中、昔の自分と対面するかのように行う店舗内の物色は、非常に楽しめた。
「おー!これ裏ジャケ、こんなんなんだ」
「アナログも結構売ってるなあ」
楽しみ過ぎて、独り言が漏れ出る。
そんな自分の独り言のキモさに気付き、周りを見回すと先ほどまでの中年の方々が居なくなっていた。
それどころか、居るのは若い女の子たち。
どうやら、ちょうど店内ライブを終えた地元アイドルの、片付け中であろうスペースに入り込んでしまったようだった。
年端も行かない若いアイドルたちが、冷たい目でオレを見ている。
おそらくヤバいアイドルヲタクだと思ったのだろう。
と言うか、スタッフも入るの止めてよ。
結局、焦ったオレはアイドルたちに「へへえ」みたいな謎の会釈をして、その場を立ち去った。
相当キモかったに違いない。
夢中になっても、歩みを止めるべき場面では止めないといけない。
こう言う時に必要なんだな、アイドリングストップって。

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