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ネコがにゃあと鳴いた

「ネコがにゃあと鳴いた」で締めたら、何でもエッセイっぽくなる。少し含みを持たせているような。「今日はたわいも無い一日だった。ネコがにゃあと鳴いた」とか「冬の訪れを感じた。ネコがにゃあと鳴いた」とか。もっとうんこみたいな文章でもそうなると思う。「叔父が賭け麻雀で逮捕された。ネコがにゃあと鳴いた」だって行ける。「喫茶店で隣に居たおばあちゃん、怪しいシャンプー買ってた。ネコがにゃあと鳴いた」だって行ける。

 ネコはズルい。素朴な可愛さの中に、何となく哀愁を感じる。便利だ。加えて「にゃあ」と言う鳴き声もズルい。本来「ニャー」とも「にゃー」とも書けるくせに「ー」を「あ」と表記されたら堪ったもんじゃ無い。雰囲気出し過ぎ。気取り過ぎ。これがイヌだったらどうだろう。「イヌがワンと鳴いた」もうめちゃくちゃバカじゃん。この際、表記がひらがなとかカタカナとかはどうでもいい。「ワン」って鳴き声が超バカだと思う。ただ、イヌはかわいい。一応、言っておく。

 ここら辺でエッセイ界の超新星みたいなヤツが、物議を醸すような動物を出してほしい。「小春日和の中、あの日を思い出した。ゾウがパオ〜ンと鳴いた」とか「エアコンの効いたコンビニはまるで極楽だった。ライオンがガオ〜ンと鳴いた」とか。いっそのこと、鳴かなくたっていい。「タヌキがぽんぽこ踊り出した」でも「ウサギがぴょんぴょん跳ね回った」でもいい。いや、そこまで来ると前衛的過ぎて鼻につくな。自分の子どもがそんな文章を書くタイプだったら、嫌い過ぎて仲悪くなる。大学に行かせたくなくなる。

 と、色々書いたけど「ネコがにゃあと鳴いた」に逃げる人の気持ちも分かるは分かる。こう言う文章って、割と落とし所が難しい。それをエッセイっぽさで逃げるしかないのだろう。そして、こんなしょうもないことを頭ごなしに皮肉るとどう締めていいか分からなくなる。現に今、オレがそう。オレはわんと泣いた。

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