スーパーで絡まれる金髪

大学時代、バッキバキの金髪だった時期がある。
よくある小心者が虚勢を張って大きく見せようとしてのブリーチだ。
自分の性格にパンクさは微塵も無い。
また、田舎者の自分が都会に馴染みたかった節もあるだろう。
そんな見てくれをしていたある日、当時住んでいたアパートから近所のスーパーに出掛けた。
格好は、Tシャツ、スウェットのパンツ、サンダル。
まあ、自宅付近を徘徊する時のあるあるを詰め合わせたような格好だ。
しかしながら、頭が金髪であるため、ヤンチャそうに見えていたのかもしれない。
それゆえ、絡まれた。
ただ、何も因縁を付けられたわけではない。
どちらかと言えば、自分が因縁を付けたような形になってしまったのだ。
スーパー入店時、後ろを歩いていた髭面の男性が、オレのサンダルを踏んでしまった。
おそらく事故的に踏んだだけだろう。
そう、そこでスルーすれば良かったのだ。
だが、純粋無垢な田舎者のオレは、何故か(この人、絶対謝ってくるだろうから、スッとお詫びを聞ける体制に入ろう!)と思って、振り返りじっと見つめてしまった。
一瞬どころではなく、十秒ぐらいは目を合わせていた。
その結果、「なんだてめえ!」と凄まれてしまった。
ヒェッ!
謝罪されると思っていたオレは、そりゃもう驚いた。
「なななな何ですか?!」
いや、オタクじゃん。
そして、あまりの動揺っぷりを見た髭面は「はっ」と見下すように鼻で笑い、焦るオレを追い抜いて酒コーナーに向かって行った。
この一連の流れだが、今でもふとしたタイミングでたまに思い出して、無性に情けなくなる。
そもそもこちらが悪い訳でも無いし、あれだけバッキバキの金髪にしていたなら、負けずに堂々と凄み返せば良かった。
「なななな何ですか?!」ってダサ過ぎるだろ。
無理して反応するなよ。
雄弁は銀、沈黙は金。
金髪らしく沈黙すべき場面だったな〜、と今でも後悔している。

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