気持ち悪い

気持ち悪い生物の展示会に行ってきた。
古今東西の気持ち悪い生物は、不気味さもありながら、どこか可愛らしかった。
急ごしらえみたいなチープさのある会場だったが、捻出した費用ぐらいは楽しめる内容だったと思う。
ただ、その展示物以上に鳥肌が立ったことがあった。
それは、順路を回っていた際の出来事だ。
展示会の中には、これでもかと言うほどミルワームを集めた展示物があった。
知らない人のために説明すると、ミルワームは、鳥やハリネズミなんかの餌に使われるウネウネしたミミズみたいな虫だ。
正確に言えば、幼虫なんだけど。
それ自体の気持ち悪さは覚悟も出来ていたため多少ゾッとするぐらいで済んだのだが、問題はその後だった。
そのミルワームのコーナーを過ぎ、会場を回っている時、一緒に歩いている彼女から「足元、落ちてるから気を付けて」と急に言われた。
「何をだよ〜」と笑いながら見てみると、なんと先ほど展示されていたミルワームの死骸が落ちていたのだ。
おそらく、展示のための移動中か、展示ケースの空気穴から逃げ出してしまったのだろう。
あまりに唐突な出来事にビビり散らしたオレは、大の大人のくせに騒ぎまくってしまった。
いや、彼女も彼女でなんでそんなに冷静沈着なんだよ。
とにもかくにも、そんな出来事の後に見る展示物は、何かしら脱走しているのではないかと気が気じゃなかった。
服や靴に入り込んでいたら最悪過ぎる。
そして、何より気持ち悪かったことは、ミルワームの死骸を見かけた人々の関心の無さだ。
後続の客たちもどうやら演出と思ったのか、誰もスタッフに報告する様子が無かった。
いや、まあオレも報告していない内の一人だから、人のこと言えないけど。
うーん、グロテスクな姿をした生き物以上に、人々の無関心さの方が、本当は気持ち悪いのかもしれませんねえ。
どうだ、ここまで雑に終わらせると気持ちが良いだろう、なはは。

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