カチョ

彼女と上野動物園に行ってきたのだが、ちょっと気になることがあった。
入園し、本来、一番最初に出会う動物は、マスコットでもあるパンダだ。
ただ、パンダには抽選が必要で、オレたちは、その申し込みをしていなかった。
なので、オレたちが一番最初に出会った動物は、シカだった。
目玉ではないとは言え、シカも、パンダに負けないぐらいスーパー可愛い。
こちら側を向きながら、葉っぱをモシャモシャ食べる様子は、まるでサービス精神旺盛なアイドルのファン対応のようだった。
十分にシカを堪能し、「そろそろ次の動物でも観に行くか〜」と振り返った時、向こう側からお子さん連れのお母さんがやってきた。
冒頭のちょっと気になることとは、そのお母さんがお子さんに向けたセリフだ。
「ほら!見て!イノシシ居るよ!」
……イノシシ?
そこにはシカしか居ない。
どこをどう見ればイノシシなんだろう。
イノシシとシカを見間違えることなんて、山中のビギナー猟師でも無い限り、そうそう無いと思う。
また、重度の花札狂いが三日三晩不眠不休でプレイし倒しても、イノシシとシカはごっちゃにならないはずだ。
それゆえ、お母さんのセリフが、めちゃくちゃ気になった。
そして、何よりお子さんの行く末を案じた。
園内地図をしっかり見れば、イノシシで無いことは一目瞭然で分かるのに、早とちりするぐらいのお母さんだ。
きっと、柵に貼り付けられたシカの説明看板には、目もくれないだろう。
そうなると、お子さんは、シカをイノシシとして覚えてしまう。
もし、そんなお子さんが成長して、修学旅行で奈良を訪れたら、堪ったもんじゃないだろう。
シカをイノシシと呼ぶヤツとして、クラス中から、イジられまくること請け合いだ。
オレはそんな未来を憂いた。
馬鹿の漢字の由来は、誰かが馬を鹿と呼んだことがキッカケとのことだが、そのお子さんには鹿猪を見ない未来を歩んでほしい。

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