千人伝(百一人目〜百五人目)
百一人目 孤濁
こだく、と読む。
孤濁は誰かといる時は澄んでいるが、一人になると濁った。だくだくと濁った。何を飲んでも泥水のようで、吸う息には空気よりもチリ、ホコリの方が多かった。だから孤濁は常に他人を求めた。すぐに人に寄り添って、交わって、抱き合った。
それでも相手が眠れば、あるいは去れば、時には死んでしまえば、孤濁は一人になってしまう。一人になれば濁ってしまった。濁ってしまえば気持ちもどす黒くなるばかりだった。
孤濁の最期は、大災害で逃げ惑う群衆に踏み潰される、と