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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

#ショートショート

「人の降る街では転落死を防ぐために政府から羽根が支給された」#シロクマ文芸部

 赤い傘を差していたので、血の雨が降っているのに気付くのが遅れた。手首を切った女性が空を…

泥辺五郎
2週間前
23

「声がら」#シロクマ文芸部

 金魚鉢に残された金魚の抜け殻を見つけ、夏が近いことに気がついた。確か去年もそうだった。…

泥辺五郎
3週間前
19

「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。…

泥辺五郎
1か月前
20

「入学魔法」#新生活20字小説

黄色の学帽が園児を小学生に変えてしまう。 シロクマ文芸部の企画「新生活20字小説」に参加し…

泥辺五郎
2か月前
25

「執筆怪談」#シロクマ文芸部

 始まりはバイトをさぼる口実だった。当時入院中だった父方の祖母の見舞いに行くから、と。あ…

泥辺五郎
2か月前
28

「馬糞症にまぎれて」#シロクマ文芸部

 春と風の取り合わせが花粉症という前時代の病気を思い出させる。しかし現代に花は咲かない。…

泥辺五郎
3か月前
21

「うるう秒に生まれて」#シロクマ文芸部

※実際の「うるう秒」は閏月には設定されません。  閏年、閏月、閏秒に生まれた僕は、四年に一度しか歳を取れない身体である。通常の人と比べて四分の一のスピードでしか成長できない。保育園と幼稚園にそれぞれ人の四倍通ううちに二十四年が経過した。私を生んだ歳にそれぞれ三十六歳だった両親は六十歳になっていた。  小学一年生を四年間繰り返す。初恋の相手はどんどん大きくなっていく。入学当初の同級生は、僕が三回目の二年生生活を始める頃には中学生になっていた。  古い町だ。飛び級なんて認め

「宇宙律俳人とは旅に出ないことにした」#シロクマ文芸部

 梅の花を探しに出た。妻と二人で。長い長い入院生活が終わって自宅に帰ってきた私は、弱った…

泥辺五郎
4か月前
20

「陸の始まり」【書き初め20字小説】

海水を飲み干したクジラが打ち上げられた。

泥辺五郎
5か月前
27

「怪獣『紅葉鳥』誕生秘話」#シロクマ文芸部

 紅葉鳥誕生秘話、なんて大げさなものはないですよ、それはね。私の怪獣造形デビュー作ではあ…

泥辺五郎
7か月前
11

「だがその後二度と飛べず」#小牧幸助文学賞

ヘドロに飛び込んだ蝶だけが、生き延びた。

泥辺五郎
7か月前
23

「かつて夜空に月は12個浮かんでいた」#シロクマ文芸部

 月めくり式カレンダーをめくると12月が現れた。幼い頃の私は疑問を何でも父にぶつけたものだ…

泥辺五郎
8か月前
18

「鍵穴から覗き込んでくる一般相対性理論」#シロクマ文芸部

 消えた鍵穴は覗けない。慣れないミステリー小説を書いている最中、主人公に「誰もいないはず…

泥辺五郎
11か月前
19

「書かれることのなかった小説」#シロクマ文芸部

7/11追記 少し修正(二行目だけ)。関連のありそうな記事のリンクを追加。  私の日々にヒビが入ったのは日比野に出会ったあの日からだった。  そう書き出した原稿だったが、すぐに文章に棒線を入れて消した。「あなたの日常を書いてください。次にそこから少し逸脱した話を書いてみてください。それはもう、小説になっています」そんなことを言う講師の口車に乗せられて書こうとした初めての小説は、自分自身のことをありのまま書けない事情があるから、駄洒落で誤魔化してしまった。  自分で添削して